福岡を代表する麺料理と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。おそらく多くの人が「博多ラーメン」「豚骨ラーメン」と答えるのではないだろうか。白濁した豚骨スープに、細いストレート麺、そして替え玉。全国的な知名度で考えれば、間違いなく福岡を代表する麺料理はラーメンだろう。

 しかし、実際に福岡の街を歩いてみると、少し違った風景が見えてくる。街のあちらこちらにあるのが「うどん店」だ。昔から続いている老舗や、うどんと酒を楽しむうどん居酒屋、さらにはチェーン展開しているうどん店まで。福岡には、人々の生活に寄り添うようにうどんがある。うどんは福岡のソウルフードなのだ。

創業昭和26年。ふっくらとしたやわらかい麺と天然だしが特徴の『因幡うどん』

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うどんは福岡のソウルフード

 そもそも、福岡とうどんの関係は古い。福岡市博多区にある承天寺には、「饂飩蕎麦発祥之地」と刻まれた石碑がある。鎌倉時代、承天寺を開いた聖一国師が宋へ渡り、1241年に帰国した際、うどんやそば、羊羹、饅頭などの製法を日本に伝えたという伝承がある。

博多駅そばにある承天寺に建立された饂飩蕎麦発祥之地の碑

 もちろん「福岡がうどん発祥の地」という説には歴史的な議論や異論もあるだろう。しかし、少なくとも博多が中世から大陸との交流を通じて、さまざまな食文化を受け入れてきた土地であることは間違いない。

福岡うどんとは

 では福岡のうどんはどのようなものなのだろうか。全国的に展開している『丸亀製麺』や『はなまるうどん』はコシの強さが特徴の、香川の讃岐うどんであり、一般的にうどんは麺のコシで語られることが少なくない。

 しかし、福岡のうどんは驚くほどに柔らかい。ふわふわとした食感のうどんを出汁と共に味わうのが福岡のうどんだ。これは京都などでもみられる傾向だが、出汁を飲ませるために存在する麺なので、コシなどの主張が弱いのではないかと考えられている。つまり、讃岐うどんは麺が主役でその食感を楽しむ料理であるのに対して、福岡のうどんは出汁との一体感を楽しむ料理であると言えそうだ。

 出汁はイリコやアゴ(トビウオ)などの魚介出汁をベースにした、透明度が高く薄口でまろやかな味わいが特徴だ。また、北九州などではサバ節やシイタケの旨味をしっかり効かせた店も少なくない。ちなみに福岡ではうどんの出汁のことを「すめ」と呼ぶ。店によっては少なくなった「すめ」を足してくれる店もある。