建築大手・大林組の本社勤務を経て、「やっぱり職人さんと働く現場が一番面白い」と泥臭い工事現場へ直訴して舞い戻った女性がいる。石坂ゆいさん、37歳。過酷な環境に身を置く彼女だが、現場手当などもあり40歳を前にして年収は1000万円を超える見通しだ。「夫より私の方が恵まれているかも」と笑う彼女は、男社会の建設現場でいかにして職人たちの信頼を勝ち取ったのか。佐藤斗夢氏、大西孝弘氏による『ブルーカラー年収1000万円時代』(日経プレミアシリーズ)より一部抜粋してお届けする。

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原点にあるのは職人への憧れ

 大林組で施工管理を担う石坂ゆい工事係長(37歳)は、2026年の年収が1000万円を超える見通しだ。

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 かつては一人前の監督として甘く見られていないかと葛藤したこともあるが、今は技能者(職人)とのコミュニケーションを通じて、現場を動かすことにやりがいを感じる。「次は所長を目指す」と強い決意を示す。26年6月末、梅雨空の下の夏日。じわりと汗がにじむ東京都内のビル建設現場で、石坂氏は屈強な職人たちに物おじすることなく、きびきびと声をかけていた。施工管理は現場監督とも呼ばれ、工程や品質、安全を管理しながら工事を前に進める仕事だ。

写真はイメージ ©AFLO

 入社以来こだわってきたことがある。現場で働く人を「作業員」ではなく「職人さん」と呼ぶ。「自分の仕事を『作業』と見られるか、『職人の仕事』と見られるか。その違いは、現場の空気や仕事の質にもつながる」と力を込める。

 職長や親方との打ち合わせが多い仕事だが、職人の一人ひとりに、朝は「おはようございます、よろしくお願いします」、帰りには「ありがとうございました、お疲れ様でした」とあいさつを欠かさない。

 安全面で不安な動きをしていたり、苦労していたりしそうな職人がいれば、自分の担当工事でなくても声をかける。「困ったらこの人に話しかけていい」と思ってもらうことが、現場を動かす力の土台だと考えているからだ。

 原点にあるのは、職人への憧れだ。大学と大学院で伝統木造建築の構造を学び、大工の仕事に強く引かれた。授業でビルの工事現場を見学し、巨大な建物も最後は人が一つ一つ手で組み上げていることを知った。「これも職人さんの仕事なんだ。格好いいなと思った」(石坂氏)

 学んだ知識を生かし、職人に一番近い場所で役に立てる仕事を探して就職活動し、ゼネコンの施工管理にたどり着いた。大林組を選んだ決め手は、職人との向き合い方だった。「『いいからやれ』と一方的に押し切るのではなく、職人さんの話をよく聞き、対話しながら仕事を進める姿勢に引かれた」と振り返る。