独立準備を続けながらも、すしを握るトレーニングの機会を増やすため、23年4月からは新橋駅近くの人気すし店で社員として働いた。勤務は週4日。残りの3日を間借り営業などに充てた。勤務先の店舗も休業日に間借りし、人気すし店の顧客に自身の認知を広げた。こうした活動と並行して、間借り営業における価格を少しずつ引き上げていった。

 間借り営業を始めた頃は月収約20万円まで落ち込んだが、それにすし店の社員としての給与が加わり、独立前には年収約500万円まで回復。会社員時代に近い水準へ戻した。

 この時期は試行錯誤が多かった。「すしを握る技術を磨いただけでは、店の運営の他の部分でつまずく。仕入れや集客など、いろいろな力が必要だとよく分かった」(清水氏)

ADVERTISEMENT

IT活用できめ細やかな顧客管理、リピーター生む

 24年8月、とうとう「すし日和」を開いた。

 開店当初から完全予約制を選んだ。予約の受け付けを始めると、わずか2日で最初の1カ月分が埋まった。人気店で握った実績に加え、間借り時代から通う固定客がついていたためだ。その後の売り上げの伸びを支えたのも、リピーターだった。

 26年6月にも月間売上高の過去最高を更新。今も顧客は半数以上がリピーターだという。

写真はイメージ ©AFLO

 完全予約制で席が埋まるならメリットは大きい。予約で来店人数を把握できれば、必要な魚の量を見通しやすい。廃棄を減らせる分、より良いネタを使える。ネタの良さに満足した客が次の予約を入れ、再び席が埋まる好循環をつくった。

「ITベンチャーで働いた2年間で、ITリテラシーはかなり高まった。それが、いま店の運営に生きている」と清水氏は話す。

 店はビルの5階に位置する。通りがかりに店の存在に気付き、興味を持つ人はまずいない。新規客の獲得にはSNSやグーグル広告などインターネットを主に使う。予約1件を獲得するのにかかった費用を示すCPA(編集部注:顧客獲得単価)を見ながら広告費を調整する。

 同時に力を入れるのが、既存客の満足度アップだ。ホテルなどでも使われる顧客管理システムを導入した。顧客一人ひとりの苦手な食材や好みのシャリの大きさ、食べる量、来店時に会話したことなどを記録し、従業員と共有する。

「前に話したことや好みを覚えてもらえていたら、やっぱりうれしい。『自分は少し特別な客だ』と感じてもらうことが大事だ」(清水氏)