とにかく煽って「劣化している」と騒ぐほうが…

 当時の学力調査の報告書を確認すると、たいてい「過去と正確に比較できる調査がない」ことを認めている。学力が低下していると断言するというより、学力低下論に対する批判や懐疑論を踏まえてあれこれ断ったうえで「それでもむかしならもっとできたはずだ」とか「これくらいできないのはまずい」という書き方になっている。

 日本教育学会学力調査委員会が城戸幡太郎らを委員長として実施してまとめた『中学校生徒の基礎学力』(東京大学出版会、1954年)では、海後宗臣が、戦前と戦後では社会状況やカリキュラムが異なるから厳密な比較は困難だと書いている。海後は、学力が「低下」したかについての断定を避け、「低学力」である現状から「学力をいかに向上させるか」に議論をシフトさせようとした。誠実な態度と言える。

 しかしこの調査結果も一般的には基礎学力不足を示すものとして報道され、新教育批判の材料とされた。間違っていても責任を取るつもりもないのに短絡的に、センセーショナルに報道するマスコミ、あるいはろくに調査結果も読まずに学力低下していると決めつけた世間や現場教員の読解力の低さがなげかわしい。

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 ひとくちに「中学」と言っても、戦前の旧制中学校は、一部の富裕層や学力上位層が進学する教育機関である。一方、戦後の新制中学校は義務教育で、就学率はほぼ100%。単純に戦前と戦後で学力を比べていいわけがない。

 このようなまともな意見、冷静な検証はいつも分が悪い。とにかく煽って「劣化している」と騒ぐほうが人目を惹きやすい。