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特に感情の起伏も見せずに龍は言うのだった。
もし死んでいるのなら、死亡届が出ているはずだ。巡査は朝吉の家を出て、その足で役場に向かうと、村長は空襲で焼け死んだという話は聞いているが、死亡届が出ていないと言った。不審に思った巡査が再び尋ねると、最初は前回と同じく空襲で死んだと言っていたが、にわかに証言が変わった。
「トラは病気で死んで、庭に埋めた」
母親が漏らした「衝撃の一言」
空襲で死んだのではなく、家で死んだのであるなら、何らかのトラブルがもとで殺害された可能性もある。龍と朝吉は警察署に呼び出され尋問を受けることになった。
はじめは食い物がなくて栄養失調で死んだと言っていた龍が、ぽつりと洩らしたのだった。
昭和20年3月26日、近所からの貰い物で日々しのいでいた朝吉一家であったが、その日ついに食べるものが無くなった。
龍は日頃から、自分と血の繋がる前夫との間にできた長女、朝吉との間にできた2人の子供には目をかけてきたが、トラにはきつく当たってきた。日々満足に食えない中で、トラは身体が大きかったこともあり、人一倍飯を食らうことも、彼女には我慢ならないことだった。