2006年、秋田県で自らの娘と近隣の男児を殺害した畠山鈴香。自ら殺害しておきながら「真相が知りたい」とマスコミの前で「悲劇のヒロイン」を演じるなど、その行動はあまりにも異様だった。なぜ彼女は自ら逮捕されるようなリスクを冒し続けたのか――。
いじめに苦しんだ学生時代、無機質な実家、そしてシングルマザーとしての困窮生活。事件から歳月が流れた今も残る彼女の「心の闇」と、破滅へと向かった不遇な半生を、ノンフィクション作家の八木澤高明氏の文庫新刊『殺め家』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目)
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自ら捕まるような真似
なぜ彼女は自ら捕まるような行動をとり続けたのか、そうした行動の背景は未だに解き明かされておらず、謎のままである。
鈴香が生まれ育った秋田県能代市は、世界遺産である白神山地の玄関口としても知られ、付近は水田が広がり静かな農村地帯である。鈴香の父親は、ダンプを数台所有する運搬会社を経営していた。母親は高校卒業後にJR二ツ井駅近くの繁華街宝来町にあるスナックで働いていた。
2人は客とホステスという関係から結婚に至った。私が現場を歩いた2009年、かつて母親が働き、それを目当てに父親が足繁く通った街の繁華街は今ではひっそりとして寂れてしまっていた。母親が働いていたスナックは既に無く、駐車場になっていた。
江戸時代からの木材の運搬で賑わい、多くの人々であふれ返った街には、以前遊郭もあったというが、今日の姿からは想像もできない。
鈴香の父親とは猟銃を撃った仲間で、鈴香の実家にも行ったことがあるという町の食堂の主人が父親の人となりについて語ってくれた。
