発言や行動の一貫性が求められがちな現代において、自身の価値観の変化にどう向き合うべき? 誰かの「自分だけのものにしておきたかった」という心理は理解できる? そして「独りでおなじ空を飛ぶ」というトークイベントのタイトルに込められた想いとは? 新刊『魔女になりたい』を刊行した伊藤亜和さんと、かねてから伊藤さんと親交のある紗倉まなさんが語り合います。(全2回の1回目/2回目を読む)
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「ゴーストライターがいるんですよね?」
紗倉まなさん(以下、紗倉) 新刊、本当におめでとうございます。去年、私がエッセイ『犬と厄年』を出した時のイベントでもお話しさせていただいたんですけど、亜和さんの刊行スピードが速すぎてちょっと信じられなくなってきました(笑)。
伊藤亜和さん(以下、伊藤) 自分でも「誰が書いてる?」と思います(笑)。「ゴーストライターがいるんですよね?」って訊かれたら「そうです」って言ってしまいそうになりますけど。
紗倉 でもそういう部分も含めて、亜和さんはX(旧Twitter)をうまくお使いになっているような感じがしますけどね。逆手に取っているというか。
伊藤 みんなが踊ればいいと思ってる(笑)。「だって私悪くないもん」って思ってるから。
紗倉 あはは(笑)。私、亜和さんの著作をひとりのファンとして毎回本当に楽しく読ませていただいていて。もちろん変わらない良さもあるんですけど、今回の『魔女になりたい』を読んで、亜和さんの他者の受け入れ方が少しずつ変化していっている感じがしました。
伊藤 ありがとうございます。一方で、「著者の価値観が変わっていくこと」が、今の時代に果たして受け入れてもらえるのだろうか、というのは少し気になります。今は、「前はこう言っていたのに」と言われてしまいがちで、考えや人間性が変わっていくことよりもむしろ「ブレない強さ」が求められている気がしていて。
紗倉 作品を書き続ける上で意識せざるを得ないというか、呪縛にもなりますよね。亜和さんは、過去の自分の作品で書いていることと今の考えが明らかに違う時はどうしていますか?
伊藤 「私、前はこう言っていましたよね」ってちゃんと自分で覚えていて前置きすることが大事なのかなって思うんです。覚えてる範囲でしかできないんですけど。
紗倉 亜和さんは、ちゃんとその変化を書き記しているなと思っていました。私、全然覚えてないんですけど(笑)。過去に書いたことももちろん嘘ではないけれど、その頃の自分でしかない部分も絶対にある。
伊藤 私は1冊目のエッセイを出してからまだ2年しか経っていないんですが、これまでは家族の話とか「作家になる前の過去の私」を書くことが多かったので、「この時の私は頭がおかしかったよね、ごめんね」って免罪符にできた部分があったんです。でも今回の『魔女になりたい』のような新しい本になってくると、この時の自分と、今の自分の価値観がほぼ一致してくるから、言い訳ができないんですよ。「ここ(本の中)で頭がおかしいやつは、今も頭がおかしい」ということになっちゃうから、いよいよごまかしがきかない(笑)。だから「私、こういう感じのキャラクターで決定です」って開き直るしかない。
紗倉 追い詰められてきたんですね(笑)。


