声優の野沢雅子が10月25日、90歳の誕生日を迎えた。日本画家だった父の教え、高校生の頃に知った“出生の真実”……。レジェンド声優の意外な生い立ち、そして「今後の目標」や引退について、かつて語っていたこととは?(全3回の3回目)

2024年、第71回菊池寛賞授賞式での野沢雅子さん ©文藝春秋

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 ディズニーをはじめとする欧米のアニメーションでは、事前に声を録って、それに合わせて映像をつくっていく「プレスコ」という手法が主流とされる。

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 日本でもかつて東映動画(現・東映アニメーション)がこの手法を採用したものの、テレビアニメの制作に乗り出してからは、毎週の放送にとても間に合わないため、できあがった映像に声優がセリフを当てる「アフレコ」へと取って代わられていく。

「厄介な仕事ですね。声だけで世界をつくっていく」

 アフレコでは、プレスコ以上に声優の技量が求められる。それは、野沢雅子の次の発言からもあきらかだ。

《声優は、声によってアニメーターが描いた絵に、生命を吹き込むわけです。描かれた人物の輪郭は、それだけでは人形のからだにすぎない。そこに息を吹き込み、呼吸させる。/厄介な仕事ですね。声だけで世界をつくっていくわけでしょ。舞台なら肉体がある。しぐさによって、微妙な感情表現も可能です。ところが声優はその肉体が使えない》(『週刊ポスト』1998年3月13日号)

「厄介な仕事」と言いつつも、彼女は続けて《私自身は、そんなに苦労しているという意識はありません》として、『ドラゴンボール』で悟空と悟飯・悟天の父子3役を演じても混乱することなく自然と切り替えられると、あっけらかんと語っていた。