118歳まで少年役を演じたい

 野沢も、自分が娘を儲けた頃の母親の年齢を迎えるあたりから、今度は自身に言い聞かせるようにこの歳までは現役を続けるという発言を繰り返してきた。11年半前、78歳のときの取材記事では、《ここまできたら、できる限り自分の可能性に挑戦したい。100歳の現役声優としてギネスブックに載るように、頑張りますよ》と語っていた(『週刊現代』前掲号)。これが5年ほど前の雑誌連載での発言では、さらに目標の年齢が大きくなる。

《今の私の夢は、128歳まで生きて、118歳まで現役の声優でいること。そしてその年で少年の役をやること。素敵でしょ? 「やろう」って思っていれば、きっと長く続けられるし、「もうダメだ」と思ってしまったら、人間はダメになっちゃう。常に前向きでいたいんです》(『anan』2021年2月3日号)

2024年、菊池寛賞授賞式での(左から)岸七百樹(栗山英樹さんの代理人)、小沢慧一さん、野沢雅子さん、片岡京子さん(片岡仁左衛門さんの代理人)、東野圭吾さん ©文藝春秋

 ちなみになぜ118と128なのかというと、数字のなかでも「8」が好きだからだとか。

 野沢が声優を続けるなかで、技術は急速に発達を遂げた。白黒だったテレビはカラーになり、さらにインターネットが登場し、いまや生成AIを使って誰もが簡単に動画や音声コンテンツをつくれる時代だ。

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「ハートですよね」「生きてる言葉にしてほしい」

 近年、声優たちが生成AIにより声を無断で利用されるケースがあいついでいる。声優が多数加入する日本俳優連合はこの状況に危機感を募らせ、声の利用についてのガイドラインを作成し、今月15日に記者会見を開いて発表した。

 同連合の副理事長である野沢は会見にビデオメッセージを寄せ、《みんながルールを守って、人間もAIもお互いに楽しくなれる未来をつくれたらなって、私は願っています》などと語った。また、その収録と同時に受けたNHKの取材では、AI時代の声優はどうあるべきかと問われ、次のように答えていた。

《ハートですよね、絶対そうですよ。だって、私たちってハートがなかったら……セリフもただ字を読んでるだけじゃないですよ。“あ”なら“あ”の一言でも生きた“あ”にしていると思ってやってます。(声優を目指している人は)生きてる言葉にしてほしいです》(「NHKニュース」2026年10月15日配信)

©文藝春秋

 絵に生命を吹き込むという意識で声優を続けてきた野沢ならではのメッセージではないか。喜ぶべきは、そう語る彼女の声にあいかわらず張りがあり、口調も明瞭だったことだ。この分ならまだまだ引退する日は遠そうである。

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