詳しい地域や事情は伏せるが、当事者は中国から数年前にやってきた家庭。経済的な余裕はあるものの保護者も子どもも日本語が十分ではない……。という、潤日かそれに近い人たちだった。しかも、両親のうち片方が普段は中国国内におり、言葉の通じない日本で実質的に片親で子育てをおこなっている。
もっとも、この保護者は生活や教育の水準は高く、国際的な基準からは決して非常識な人ではない(むしろ品がいい)。ただ、自分の主張に細かくこだわるタイプの人で、それを日本語ができない状態で学校側にしばしば伝える。学校側は毎回、対応に膨大な時間を取られる。いちど説明して合意したはずの事柄が蒸し返されることも多いらしく、学校側はかなりの負担とストレスを覚えているようだった。
こういうトラブルは、おそらく東京の一部地域ではすくなからずある。「潤日」組の中国人は、(中国系の移民エージェントが勧めるためか)港区や文京区、湾岸地域などにある人気の公立小学校の学区に家を買いがちだ。名門私立中学への進学率が高い公立小は、中国人の親から見ると「ブランド」。中国国内では、名門校の学区に無理をしてでも住所を置く傾向が日本より強く、この中国の常識が日本にも持ち込まれているらしい。
だが、問題はコミュニケーションだ。新学期には雑巾2枚、遠足の日にはお弁当、防災訓練の日は午後2時に保護者が迎えに来ること……と、小学校は日常連絡が多い。日本語がわからない親でも、連絡メールなどをAIに読ませれば対応は不可能ではないが、小学校のローカルな連絡内容を理解するのは日本人の保護者でも難しい。教師が個別に説明する必要があったケースは多いとみられる。
しかも、これは日常連絡なのでなんとかなるだけだ。いじめ、不登校、喧嘩、男女問題など、解決が難しいトラブルの場合はどうか。加えて、中国人保護者が学校や教員の対応に不信感を持っている場合は……、となると、状況はかなり厳しくなってくる。
ちなみに、私が関わった問題は後者に近い。中国人保護者の側は、トラブルが解決しないことで学校や他の日本人保護者を信頼していないようだった。学校や教員側も何度も説明を繰り返して疲弊し、やはりこの保護者に反感に近い感情を抱いている。
正直、間に立つ側としては学校側に同情した。そもそも、いくら「ブランド」視されていても、この学校は公立小学校だ。単に保護者の経済力や児童の私立進学率が高めなだけで、先生たちは普通の地方公務員である。行政の異文化サポートはあるものの、現場の先生は国際コミュニケーションの専門家ではない。ましてや中国の知識を持つ人がいることは、ほぼないと思われる。これも社会問題だよな、と思わざるを得なかった。
日本社会はどこまで負担できる?
念のために言えば、私は「中国人が日本の学校に通うのは問題だ」と言っているわけではない。事実、すでに都市部を中心に、日本で育って日本語が完全な母語、行動も思考パターンも日本の子と完全に同じ……。という中国系の子どもも大勢いる。つまり、学校で雑巾掛けをして家で国語の教科書を音読し、スポ少や学童に通うような「普通の小学生」だ。