最新の成果に基づく科学的ながん予防法
食事だけでなく、体を動かすことも大切だ。ここ10年の間に、運動ががんの再発率や死亡率を下げるのに有効とする報告が相次いでいるからだ。たとえば、複数の研究データを統計的に統合して解析した研究で、運動によって乳がんの再発率が24パーセント、死亡率が34パーセント減少することが示されている。また、大腸がんについても、再発率、死亡率とも最大50パーセントの改善が認められた。さらに、前立腺がん、卵巣がんでも、同様の結果が出ている。
まだ、さらに検証が必要なデータだが、がんになってからも食事や運動がいかに大切かわかるだろう。ただし、だからといって、のめり込み過ぎるのもよくない。がんになると仕事をやめてしまい、がんを克服するための生活が中心になってしまう人がいるそうだ。しかし、がんに人生が支配されたようになり、がんに追い詰められるのは、あまり好ましいことではないだろう。
かつて、がんとの闘病は前向きであるほうが長生きできると考えられてきた。しかし、いくつかの臨床試験が行われた結果、そうした考えは否定され、現在では無理に前向きになるよう励ますのではなく、その人らしくがんと向き合うのが一番とされている。
なので、生活習慣についても、がんになって無理やり変えるのではなく、生活を見直すきっかけにすればいいのではないだろうか。ここまで見た通り、がんになってからの予防にいいとされる食事や運動は、がんにならないようにする一次的な予防法と共通している。つまり、決して特別なものではない。がんになる前から健康的な生活を心がけること、そして、がんになってからもその生活を続けることが、理想的と言えるのではないだろうか。
がん研究振興財団がこれまでの研究の蓄積に基づいて「がんを防ぐための新12か条」を作成し、2011年に公表している(下の表)。これを読むと、当たり前のことが書かれているように感じるかもしれない。しかし、これこそが、最新の成果に基づく科学的ながん予防法なのだ。12か条を参考に、あなたもぜひ、がんを予防する健康的な生活を送ってもらいたい。