文春オンライン

「脅す」「ツンデレ」「自賛」トランプ大統領のTwitterを政治学者が分析すると……

フォロワー数5500万人の大統領アカウントが、社会を分断させている

2018/11/01

万の単位の「いいね」やリツイート

 トランプ大統領がツイッターを使い始めたのは2009年のことであり、その時以来、すでに4万件近くの投稿をしている。現在では5500万人がフォローし、ツイートするたびに万の単位の「いいね」やリツイートがなされるという、ツイッター界ではトップクラスのアカウントである。

 内容はそれほど多様ではなく、主流派メディアの攻撃や民主党批判、選挙前には支持候補の応援が多く、敵対する国家に対する批判やイスラム過激派によるテロに対する批判は迅速で厳しい言葉を使うが、逆に国内の銃乱射事件や白人至上主義者が絡む事件に関しては反応が鈍く、凡庸な言葉しか使わない(しばしばそれらはトランプ本人ではなくスタッフが書いたものと見られる)。

 中でも重大な問題となるのは外交安全保障に関わるツイートである。いくつか印象的なツイートを紹介してみよう。

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 まずはやはりこの全て大文字のツイートであろう。

〈イランのロウハニ大統領へ:決してアメリカを脅してはならない。さもなくば歴史上見たこともないほどの帰結に苦しむことになるだろう。我々はもうお前の狂った暴力と死の言葉に耐えるような国ではない。気をつけろ!〉

 これは5月にトランプ大統領がオバマ政権時代にイランと結んだ核合意を破棄し、イランに対して徹底した圧力をかけると宣言したにもかかわらず、イランがアメリカの交渉の呼びかけに応じない中で苛立った状況で発せられたツイートであった。この「帰結」が何を意味するのかははっきりしていなかったが、状況から武力行使の可能性だと思われていた。しかし、結果としてトランプ大統領はイランに対して武力行使をする用意もなく、その素振りも見せていない。

©JMPA

トランプお得意の「ツンデレ作戦」ではないか

 このイランを脅すツイートは、トランプお得意の「ツンデレ作戦」ではないか、という疑いもあった。というのも、北朝鮮に対して同じ戦略を使ったからである。例えばトランプ大統領は1月に以下のようなツイートをしている。

〈北朝鮮の指導者の金正恩は「核のボタンは常に机の上にある」と宣言した。彼のやせこけて食事も取れない体制の誰か、彼に教えてやってくれ。私も核のボタンを持っているがもっと大きく、もっとパワフルなやつであると。しかも私のボタンはちゃんと機能する!〉

 これは金正恩による新年の辞で核戦力の完成を宣言し、経済発展に注力すると述べたことに対する反応であったが、トランプ大統領は北朝鮮に対して攻撃的で対立的な姿勢を見せていた。このツイートの他にもFire and Fury(炎と怒り)で反撃するとか、Little Rocket man(ちびのロケットマン)といった挑発的な言葉で金正恩を煽り続けていた。