4月7日、安倍政権は新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて緊急事態宣言を発令した。これにより各自治体が相次いで住民の外出自粛や飲食店等への営業自粛を要請。経済に影響が出始めている。だが、それとは裏腹に感染者数は右肩上がりで増え続け、ついに国内感染者数は9200人を超えた。とりわけ首都東京の感染者数は急激に伸びており、2700人を突破した(※4月17日時点)。
こうした中、政府と東京都の新型コロナ対策への批判を強めているのが、前東京都知事で元厚労大臣の舛添要一氏(71)だ。舛添氏は、現在発売中の「文藝春秋」5月号に「安倍官邸『無能な役人』の罪と罰」を寄稿。安倍政権の初動の遅れを指摘している。
厚労行政と都政に精通する舛添氏は、今回の緊急事態宣言発令に至る政府と都の意思決定プロセスをどう見ているのだろうか。(全2回の1回目/後編に続く)
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――4月7日に緊急事態宣言が発令されて1週間が経過しました。
舛添 私は極めて少数派だと思いますが、「緊急事態宣言はやる意味がない」と考えています。今更やったところで、感染の封じ込めに効果はないだろう、と。
安倍政権は、なぜ緊急事態宣言をしたのでしょうか。それは、新型コロナウイルス対応の初動の遅れを取り戻そうとしたからに他なりません。
新型コロナウイルスは、昨年12月8日に武漢で発生しました。日本で初めて感染者が出たのは今年1月15日。しかし、専門家会議の立ち上げなど、政府が手を打ったのは2月に入ってからでした。すなわち1カ月以上何もしていなかったわけです。
致命的だったのは「PCR検査の不徹底」
舛添 安倍政権の初動の失策は、大きく2つあります。第一には、感染者を症状別に応対する「トリアージ」をしなかったこと。本来であれば、最初から重症者は感染症の指定病院、中くらいの人は普通の病院、軽症者はホテル……といった具合に、症状別に隔離して対処にあたるべきでした。隔離施設としては五輪の選手村だって空いている。しかし、それをやりませんでした。
2つ目が、PCR検査を徹底してやらなかったこと。これが致命的でした。感染者の実態が掴めなくなってしまったからです。
少し前、安倍応援団のネトウヨを中心に「PCR検査をしたらイタリアみたいになって医療体制が崩壊する」「それ見ろ。韓国はPCR検査をやって感染者が増えているじゃないか」という言説が出回りました。私はこれはまったくの嘘だ、PCR検査はすぐにでも徹底的にやるべきだ、と主張していました。しかし、政府はPCR検査をやってきませんでした。
ここにきて、PCR検査をやることがいかに重要かが明らかになりつつあります。