将来的な予測ができない伸び方
「明日を見据えた勝ち方」と感じているのは、初代竜王の島朗九段である。
「想像を絶する実力と、驚異的な活躍です。羽生さん世代が現役のうちに藤井さんが出てきて、こういった戦いを見られるのは幸せなことだと思います。正直未知数で、将来的な予測が自分にはできないですね、どこまで藤井さんが伸びるのか」
「逆転勝ちが印象に強いこともありますが、実際は王道の勝ち方が多いと感じます。勝ち方が魅力なのは、とにかく読みきろうという気持ちが前面に現れているのが特徴ですよね。それは時間がなくなることより、彼の中では重要なのでしょう。師匠の杉本さんの存在も安心感として大きいですね。明日を見据えた勝ち方というか、そんな感じを受けます。長く勝てるフォームを会得するかのような、見る側にワクワク感を与えてくれる将棋だと思います」
「やってくれるだろうという期待感」
毎年、藤井が抜けない記録として話題になる「歴代年度最高勝率(0.8545)」を1967年に樹立した中原誠十六世名人は、「プロが見たい将棋を指している」と評する。
「どこまで強くなるかわからないという意味では空恐ろしいものを感じますね。ただ、見ていて面白い将棋を指しています。谷川さん(浩司九段)、羽生さん(善治九段)もそうでしたが、プロが見たい将棋を指していますね。新しいことをやろうとしている、やってくれるだろうという期待感があります。ワクワクしますね」
藤井が棋聖戦の挑戦者になるまで、最年少タイトル挑戦の記録を持っていた屋敷伸之九段は、藤井が自分のテーマを大事にした将棋を指していると語る。
「藤井聡太七段は勝ちまくっていますけど、将棋を見ると結果より自分のテーマを大事にしてやっていると思います。相手の得意戦法を堂々と受けて立ち、新しいことに挑戦していますからね。当時の自分ももっと意識して考えないといけなかったのでしょう。それは永遠の課題で、引退するまでは続きます」
「すごく丁寧です。よい局面でもじっくり辛抱できるし、勝ちを急ぎません。勝負しないといけないときは勝負しますけど、ゆっくり指して差を拡大していく感じです。派手な順や決めにいく手は見えているんでしょうけど、色んなことを考えたすえに確実に勝ちにいくイメージです」