みなさんこんにちは。東京ヤクルトスワローズ広報部の三輪正義です。11月10日からのジャイアンツとのクライマックスシリーズでは2勝1分け(アドバンテージ含む3勝)の負けなしで日本シリーズに駒をすすめることができました。
第1戦の奥川恭伸、塩見泰隆のシリーズにわたる活躍などがあって完勝しましたね。
しかし、僕にとっては優勝を決めた第3戦、前回の記事でも触れた、あの男が気がかりでした。
負傷降板したあの男が気がかりで……
球場の裏にいた僕ですが、ちょうど短い用事があって、球場を離れた一瞬の出来事でした。その間1、2分。球場に戻り、再びグラウンドを見やると、さっきまで投げていた原樹理がマウンドにいない。ピッチャーがマウンドから突然姿を消すのは、めった打ちにあったときか、負傷したときと決まっています。
スコアは0−0。周囲に聞くと「右手に打球が当たった」と……。
11月12日、クライマックスシリーズ第3戦。先発投手だった原樹理は2回1死で巨人・大城の投手強襲の打球を投げる右手に当てて緊急降板。後を受けた金久保優斗が3回と2/3を投げて、CS突破に繋がる好投を見せました。
「泣きそうになりました」
あの日、試合前の練習後、クラブハウスで食事を摂っていた樹理に「今日の文春野球でお前のこと書いたからな」と伝えたら「もう読みました」と。「お! 早いね!」と嬉しさを噛み殺しているとさらに「泣きそうになりました……」と殊勝なことを言って僕をホロリとさせた樹理。
数時間前のささやかなやりとりが浮かびました。CSの先発登板に向け気合十分だったのに、打球が大事な右手を直撃したなんて。「やべぇな」という言葉が思わず口をつきました。
CSがスワローズの勝利で終わり、表彰式に現れた樹理は、親指に包帯を巻いて、そこからは添え木のようなものが見えていました。励ましの言葉を短くかけたけど元気がない。心優しい坂口智隆が肩を貸したりして樹理に寄り添っています。
記念撮影で“優しさのおすそわけ”
その痛々しさが気になりつつも、選手は記念撮影をするということで、広報の仕事に専念しました。僕を先輩とも思わない後輩たちを並ばせますが、限られた時間なのに埒が明かない連中。「(優勝したときの)セレモニーのときと同じだから、早く! 早く!」「先輩後輩の順番関係ないから早く並びなさい!」「3列! ほら!」だんだん声を荒げる僕。
選手だけの撮影を終えると、役員を含めた記念撮影と続きます。すると坂口や荒木貴裕が「マーシー(正義)も入れよ!」と大声で無茶振りしてきます。リーグ優勝のときは仕切りに専念していたので(おい、それはマズイんだよ……)と全力で断るも「関係ねぇじゃん、入ろうよ」と屈託がない。
「いいじゃん!」「ダメだよ!」「いいって!」「本当にダメだって!!」。押し問答を続けていると、同じ背広組の専務が僕の背中をそっと列へと押してくれます。とっさに球団社長の顔を見ると微笑んでらっしゃる。サラリーマン的にこれはOKなんだと判断し、憚りながらも、撮影の列に加わりました。
監督より高く飛ぶ胴上げ再び
翌日、高津臣吾監督の胴上げシーンが載ったスポーツ紙を見て驚きました。あの山崎晃大朗が、高津監督と同時に胴上げされ、バッチリカメラ目線。1面を飾った某紙の写真はキャプションまで添えられているではないですか。
いつからこんなことになったのか……思い返せば2019年の僕の引退セレモニー。胴上げされている僕と山崎の目がバッチリ合って混乱した「豪雨の夜」であみだされたものでした。
リーグ優勝、雄平の引退セレモニー、そしてCS優勝。今年に入って3回目の胴上げ。これはもう「お約束」なのか。若松勉さんの「ファンの皆様、おめでとうございます」的に伝統になろうとしているのか!? のちに動画を見ると、高津監督の「山崎、俺より高く飛ぶなよ!」は“ダチョウ倶楽部的”なフリだった……いい意味でスワローズらしさが全開でちょっと誇らしい気分にもなりました。
さて、懸案の樹理ですが、2日後のスポーツ紙には「原樹理、キャッチボール」と書いてありました。包帯も取れ、手を振ってしっかりと投げていたようでひと安心。一昨日、出場資格者40人枠にも登録されましたし、日本シリーズでの捲土重来を期待したいと思います。