いかにいい流れで村上にバトンを繋げるか
個々で「もっとウケたい」とか「もっと目立ちたい」ということを考えたりもするんですが、寄席において落語家が一番に考えていること。
それは、
【いかにトリ(最後に出る演者)にいい流れでバトンを繋げるか】
ということなんです。
全員スベる(三振)なんてもってのほか。
ですが、野球と違って寄席では年に数回、いや、数十回ノーヒットノーランを喰らってしまう時があります(苦笑)。
かと思うと、まるでホームラン競争(爆笑の連続)のようなときもある。
でもやっぱり、ランナーが塁上を賑わせた状態でのホームランやタイムリーが一番盛り上がりますよね。
寄席の場合、中入り休憩後の後半に「ホームランを狙うのではなく、ヒットでも四球でもいいのでとにかく塁に出て4番(トリ)に回そう」という意識の高い演者さんが揃っていて、しかもトリに実力のある師匠がドンと構えている時の盛り上がりは凄まじいものがあります。
村上宗隆=大トリ
村上宗隆という大トリに、いかにバトンを繋ぐか。
今季のスワローズは、これが徹底できているんです。
村上の前を打つ、塩見泰隆、青木宣親、山崎晃大朗らの1、2番。
そして3番、山田哲人。
その全員が、自分が決めるという気持ちを持ちつつも、後ろ(村上)にいいバトンを繋ぐという意識を持てている。
9月6日、甲子園球場での対阪神戦。
6-6で迎えた11回表にそれが如実に現れました。
先頭の山崎晃大朗。
フルカウントからファウルで粘りながら、最後は低めのストレートをしっかり見逃しての四球。
続く中村悠平。
バントの連続ファウルで追い込まれるも、そこからフルカウントまで持っていき、最後は「これぞ繋ぎのバッティング」というお手本のような右打ちでライト前ヒット。
繋ぐ意識の3番・山田哲人
そして、無死1、3塁で迎えた山田哲人。
他チームの3番バッターならば、絶対に自分で決めにいったであろうシーン。
しかし、山田哲人の中には間違いなく【無理せず村上にバトンを繋ぐ】という意識があったんだと思います。
フルカウントから外に逃げるスライダーを見極めての四球。
無死満塁で村上宗隆に繋いだこのシーンは、今シーズン何度も見られる象徴的なシーンでした。
このとき村上は空振り三振に倒れてしまいましたが、球場はため息と歓声で大盛りあがりでした。
両チームのファンにとってのハイライトだったでしょう。
村上宗隆という「大トリ」にいいバトンを繋ぐ意識を1~3番を打つ選手が持ち続けている限り、「スワローズ寄席」はどのチームの寄席よりも盛り上がるし、お客様を魅了し続けるはずです。
その想いで繋ぐ寄席の積み重ねが、最後には村上宗隆を十貫寺梅軒、いや、十冠王に導いてくれることでしょう!
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