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鳥飼茜「現実は厳しいよね、ということを徹底的に見せたい」

鳥飼茜――クローズアップ

note
鳥飼茜さん

「依頼を受けた時、10代の女の子に“傷跡”を残す尖った雑誌を作りたいと編集者に言われたんです。そこで、いつもと描き方を変えてみました」

前略、前進の君』は、10代女子向けのカルチャーファッション誌「Maybe!」で連載された。作者の鳥飼茜さんが言うように「鉛筆線」で描くことで、おしゃれでかつ、強いメッセージ性を持つ絵になった。

「普段、下書きをシャープペンでしているんです。前々から、シャープペンだけで描いた方が風合いが出るかな、と思っていた。あと、連載を3つも抱えていたので、ペン入れをしない方が早く上がるかな、とも思ったんです。これは目論見が外れて、倍の時間がかかりましたけど(笑)」

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 1話完結で、毎回異なる主人公の少女の視点で描かれる。進路への違和感、恋、同調圧力への抵抗――10代の女の子が持つ衝動を、荒々しくも繊細な筆致で表現する。

「10代の頃、世間を知らない状態で、ふいに大人から傷つけられることがあります。その恐怖や違和感は、あとあと思い出して怒りに変わったりする。逆に若い体を賞賛されて、本人はそれが正当な評価だと思ったりもするんだけど、実は女の子を消費する社会がそこにあるんです。いま読んで分からなくてもいい。大人になった私から、現実は厳しいよね、ということを徹底的に見せたいと思いました」