制服を脱いでからが本当の人生のスタート
進路希望を書く際に教師に「制服を脱いでからが本当の人生のスタート」と言われ教室を飛び出してしまう、「普通」に憧れて売春してしまう――大人が読んでも、少女たちの行動には、胸を抉(えぐ)られる。
ただ、女の子に向けたものだけで終わりたくなかったという。第5話「boys」は、男の子への羨望がテーマだ。
「高校時代の男の子たちは本当に自由に振舞っているように見えたんです。私自身、男の子に強烈に憧れがあったんですが、結界があるようで仲間に入れなかった。女子の立ち位置から、男の人のありのままの良さもきちんと描きたかった」
代表作『先生の白い嘘』ではレイプをテーマに描き、フェミニスト代表のように扱われがちだという鳥飼さん。しかし、そういう意識はない。
「若い時に受けてしまった心の傷に対して、私にはわからないから、と言ってしまったら、その人は自分の個性や人格のせいだ、と思ってしまうと思うんです。あなたの個性は大事にする。でもふいに受けた悲しみの部分は、私たちで一緒に戦おう、というメッセージを込めたつもりです」
おそらくそれは、10代の女子だけに向けた言葉ではない。内なる10代の傷を抱えた全ての人に、この作品は寄り添うという意味ではないだろうか。
「説教臭くならないようには気を付けました。表現には“かっこいい”という武器がある。構図や台詞選び含め、私が思う“かっこいい”を打ち出しました。それを読者が選んでくれたら嬉しいです」
とりかいあかね/1981年、大阪府生まれ。2004年、「別冊少女フレンドDXジュリエット」でデビュー。作品に『地獄のガールフレンド』『ロマンス暴風域』『マンダリン・ジプシーキャットの籠城』など。19年、「ビッグコミックスピリッツ」8号(1月21日発売)より、新連載『サターンリターン』開始。