紅白歌合戦って、年にいちどの国民的重大番組みたいな顔してるが、決してキチンと進行する番組ではなく、グダグダだったり肝の冷えるアクシデントはいっぱいある。よく見るのが、紅組キャプテンが「気を抜いてる&つまんなそうな顔してるところをカメラに抜かれる」。こないだも広瀬すずが、いきものがかりの時に壮絶に興味なさそうな顔をしてるのがバッチリ抜かれてた。NHKのスイッチャーなんて有能だろうになぜあの顔を狙ったように抜くか。嫌がらせか。
「紅白に出てアガってしまう出場者」というのもある。今でも忘れられないのが、石川ひとみが初出場した時(81年ですって)。人形劇『プリンプリン物語』のプリンセス・プリンプリンの声をやっていたという論功行賞的な選考で(邪推。ちゃんとヒット曲『まちぶせ』もありました)、その時のアガリっぷり。プリンプリンの声やってくれって言われてブルブル震え声の上ずり声。
その後もチラホラとアガる歌手はいたが(主に演歌系初出場)、最近はめっきり少ない。これも紅白凋落の象徴か。「別にいつものライブとおんなじっしょ」とかいうJポップ男の声が聞こえてくるようだ。
が、石川ひとみ級の超アガリが今回あった。
AKB48がタイのBNK48といっしょに、日本語タイ語ミックスの『恋するフォーチュンクッキー』を歌うことになって、BNKのセンターの子が日本語で挨拶しようとしたら、途中から頭真っ白になってコトバが出てこない。
あわわわわ。
こんなことは、よくあることである。だけど紅白では新鮮なぐらい久しぶり。画面全体および彼女を囲むAKB、BNKの子たちからイヤな汗が流れ出る。全員すげえ笑顔。でも固まってて目が怖い。松井珠理奈がいちばん怖かったけど、別に怒ってるとかじゃなくて激しくテンパってたんだと思う。十数秒、見てるこっちも冷や汗三斗。誰でもいい、黙って笑ってないで何か言ってくれ……!
そこで手を差し伸べるのは『恋チュン』センターの指原莉乃です。卒業を発表したからAKBグループで出る最後の紅白であったが、こういうところで「秋元さん家の大家族、面倒見のいい長女」のような役割をするのがとても得意な人なので(商売だとしても、あれだけ自然にやれればそれはもう見る者には真の姿だ)最後がこれでも、まあよかったんでないか。
AKBでこういう事態が再び起きた時にはもう指原はいない。他に収拾できそうなメンバーいるか? どうするんだ。あ、紅組キャプテンになってて、そこから救助に来るか。そして指原キャップはたぶん、興味無さそうな顔をしているところを抜かれたりはしない。
▼『第69回 紅白歌合戦』
NHK総合
https://www.nhk.or.jp/kouhaku/