身体全部を使って表現したかった ――松井りな
まずは松井りなさんである。写真集を眺めれば、奔放に堂々とカメラの前に立っている印象なのだけど、グラビア撮影はこれがほぼ初めてだったというから驚く。
「表情だけじゃなくて身体全部を使って表現したい! そんな思いが撮影前からはっきりあったので、無理にポーズをつくるよりも自由に踊ったり、ただぽつりと佇んでみたり、思うがまま動いてみました」
撮り手である篠山さんが、よけいなことを考えず「無」になれる雰囲気をうまくつくってくれたと感じている。
「考えるな、感じろ。そんな言葉がありますけど、まさに感じるまま動けばいいよう、うまく仕向けていただいた感じですね」
みずから手を挙げて、プロジェクトが始動するきっかけをつくったのだから、覚悟を決めて臨まねばという気概は最初からあった。
「自分で事務所の社長に直談判をしに行ったわけですし、『篠山紀信先生に撮っていただくことはできませんか?』と提案したのも私たち。あの篠山先生に撮っていただこうというからには、もちろん『じゃあヌードで』という話になるのも予想できた(笑)。これから表現者として生きていきたいという気持ちも固めていたので、私は最初から脱ぐ覚悟をしていました」
写真集として仕上がった作品を手にしたときには、やってよかったという実感が湧いた。
「本を観たという友人が、『セクシー』というより『センシュアル』だねと言ってくれてうれしかった。極めて繊細な、というような意味ですね。ヌード=セクシーというだけじゃなく、いろんな表現ができるものなんだと気づくことができました。
撮られている側としても、きれいな衣服を身につけていると、『これをもっとかわいく見せよう』といったことを考え始めてしまう。でも一糸まとわぬ姿だと、頼るべきは自分の内なるものだけだという気になります。持てるものすべてを絞り出さなければ負けてしまう! そう気持ちを奮い立たせましたね。
結果、私の生き方のすべてを投じて、全力で篠山先生にぶつかっていけてよかった。やりきった! という気分です」