ものをつくる「怖さ」を知った ――結城モエ
続いて結城モエさんに聞こう。出版後、作品を観たと同世代の女性から声をかけられることも多くてうれしいという。
「きれいにかわいく写れたらというだけじゃなくて、自分が決めた道を進む覚悟のようなものまで表現できたらと、撮影に臨みました。そのあたりがうまく伝わっていたとしたら何よりです」
制作中は、篠山さんをはじめアートディレクター、スタイリスト、ヘア、メイクらスタッフの、ものづくりへの真摯な姿勢に圧倒された。
「それぞれの分野のプロフェッショナルのみなさんが仕事に打ち込む姿勢や、撮影時の集中力に触れられたのが、私にとっての大きな財産です。本気で何かをつくるときの渦の中心に身を置いて、自分に何ができるか問い続ける日々。真剣に葛藤しました。
写真集が出版されるまで、私はヌード撮影であるということも含めて、本当は怖くてしかたがなかったんです。篠山先生にもそれは正直に告げていました。すると、『ものをつくる人は、心の中に恐れや怖さを持っていないといけない』と教えてくださって、ちょっとだけ気持ちが楽になりましたね」
本が出来上がって、それを観て感想を言ってくれる人がいて、ようやく抱いていた「怖さ」が少しずつほぐれていったという。
自身で写真集を見返してみると、反省すべき点があれこれ目についた。
「もっとこうできた、ああもできたんじゃないかといろいろ考えてしまいます。表現する者として課題がたくさん見えてきたので、いまはそれらを克服すべく、コツコツ勉強を重ねています。身体の柔軟性や身のこなし、姿勢なんかに改善の余地ありなので、トレーニングしたり食事に気を配ったり。
舞台を観に行ったり、演じることにつながりそうな古典を読んだりも。シェイクスピア作品や、日本だと鴨長明『方丈記』なんかを読んで、いろんなものを自分の中に吸収しようとしています。いま自分の内に取り込んだものが、いつかいいかたちでアウトプットされていくだろうことを信じながら」