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春日太一とジェーン・スーが語る「デートにふさわしい映画」と「東京のもてない街」

春日太一 ×ジェーン・スー『泥沼スクリーン』対談

note

なぜ「男よりかっこいい女」なのか

春日 ……しかし、話は戻りますが、本で女性をどう書けばよかったんですかね

スー いやいや、好きに書いていいと思うんですが、自分と同じ「人間」として女性が描かれている映画で、春日さんが共感する映画を私は知りたかったかも。春日さんは「男よりかっこいい女」と言うけれど、「そこ、女のままでかっこよくてもいいんじゃない?」とも思って。なんで「男より」なのかな、と。

春日 ただ女の人が乗り越えたときのかっこよさって男のマックスよりいい、っていうのはあるんですよね。

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スー そうかー。それを「人間としてのかっこ良さ」と捉えてもらえたらなぁという欲もあります。

©平松市聖/文藝春秋

春日 僕はとにかく闘ってる人が好きなんですよ。闘ってる人って美しい。で、闘う姿は男性より女性がさらにドラマチックに映るんですよね。それで闘ってる女性が一番好きみたいな感じといいますか。

スー うんうん。お互い、思春期に同性ばかりと生活していたスティグマがあるんでしょうかね。私は男性を過剰に意識せず見られるようになるまで訓練が必要でした。「違うんだけど、同じ」となるまでに。

俺は悪くない!

春日 というか、そもそも昔の日本の映画で女性が自然体で出てる映画って思い浮かばない気がします。

スー 古い映画だとなかなかないんでしょうね。

春日 今、「時代劇入門講座」ってイベントをやってるんですけど、この前、時代劇スター知っておくべき30人ってあげたら、女性がひとりも入らなかったんですよ。

スー 時代劇では男性ばかりがスターだったんですね。洋画ならあるんでしょうかね。

春日 そうか、これは日本映画の問題で、俺の問題じゃないんですよ! 俺は悪くない!

スー わはは!「ゴーストワールド」とか観てくださいよ!

春日 あ、大好きですよ。公開時に恵比寿で見ました。

スー あれくらいの、等身大の女性像。別に誰も女神じゃないし、特に蔑まれもしない。ああいう感じの日本映画はありますか?

春日 浮かびませんね。そもそもソーラ・バーチみたいな主演女優って日本にいないですよね。日本は美男美女でやってるから。

スー そうかもしれないですね。まあ、それはそれで夢があっていいですけど。

春日 日本映画の改革が必要です、つまり日本の芸能界の改革が。

スー なんだか、でかい話になっちゃった。

春日 いい気づきをいただきました!

泥沼スクリーン これまで観てきた映画のこと

春日 太一

文藝春秋

2018年12月12日 発売

生きるとか死ぬとか父親とか

ジェーン・スー

新潮社

2018年5月18日 発売

美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道

春日 太一

文藝春秋

2018年2月26日 発売

女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。 (文春文庫)

ジェーン・スー

文藝春秋

2018年11月9日 発売

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