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特集観る将棋、読む将棋

2019/03/08

持ち時間、食事、結婚……竜王になるまでの変化

 2018年、羽生竜王(当時)のタイトル通算100期がかかった第31期竜王戦に挑戦者として名乗りをあげた。壁を破るチャンスが久々に巡ってきたのだ。普通であれば隠しきれない闘志が見えるものだろう。しかしタイトル戦に向けたインタビューでは鷹揚さが目立つ言葉が並んでいた。

 そしてご存知の通り七番勝負を4勝3敗で制して竜王を獲得し、同時に羽生九段のタイトル通算100期を阻んだ。

 このシリーズで印象的だったのは持ち時間における戦略だ。持ち時間を意識的に残すことで終盤の読みの精度が上がり、終盤の逆転勝ちで七番勝負の流れを引き寄せた。また最近は対局の夕食時には常に鰻を食べて体力維持に務めるなど、食事にも気を配っているようだ。盤上だけで勝負していた若い頃との違いを感じる。

 前述の将棋世界2014年5月号インタビューで結婚について聞かれ「長期計画で考えます」と答えていたが、わずか2年半後の2016年12月に一般女性と入籍した。筆者も知る女性で、結婚の報を聞いたときは「ピッタリの二人だ」と思ったことを記憶している。闘志を内に秘めるタイプは、他人のために頑張ることを得意とする。数学の鬼に見られる変化は、結婚も要因の一つであろう。

昨年12月の竜王戦第7局。広瀬新竜王に敗れ、羽生善治九段は27年ぶり無冠に ©共同通信社

棋王戦で自身初の二冠を目指す

 現在、広瀬竜王は第44期棋王戦で渡辺明棋王に挑戦している。五番勝負は第1・2局を落としてあとがない。3月1日に行われたA級順位戦最終戦では羽生九段に敗れており、やや調子を落としている印象だ。

 一方で渡辺棋王は絶好調で、広瀬竜王にとって厳しい状況であることは間違いない。しかし短期決戦では一つのキッカケで流れが変わることもある。3月10日に新潟県新潟市で行われる棋王戦第3局で、広瀬竜王はそのキッカケとなる勝利をつかめるか。

 心優しき数学の鬼は自身初となる二冠を目指す。タイトル戦の行方にご注目いただきたい。

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