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佐々木 吉川さんは、そういう人たちのことを「見えざる弱者」と言っていましたよね。ただ、最近では、少しずつ彼らに対する見方も変わりつつあるのかなとも思うんです。例えば電車の中で太ったおじさんが全身から汗を出していて、昔はそういう人は「気持ち悪い」とかよく言われていたんだけど、この間ネットで「気持ち悪いと思って見てたけど、よく見たらヘルプマークぶら下げてた。この人はパニック障害か何かで、気を配ってあげないといけないんだって気が付いた」というツイートを見かけて。

吉川 パニック障害のことを知っていないと、「ただの汗かきのおじさん」で終わってしまうことですもんね。そうやって色んなことへの理解が進めばいいですよね。

ダメな大人をずっと見ながら育ちました

 

佐々木 これもなかなか理解されていないことかもしれませんけど、吉川さんの「情報弱者の貧困層をバカにする人、搾取する人」という記事でも「貧すれば鈍する」と書かれていたとおり、本当に貧乏な人ってダメな人が多いんですよ(笑)。僕は生まれがものすごく貧乏で、大阪の西成区にあるスーパー玉出の前のアパートで、四畳一間の部屋で家族で暮らしていました。そんな子供時代だったので、ダメな大人をずっと見ながら育ちました。その後、新聞記者をやっていたときも、そんなに格好いいものじゃなくて、社会部で殺人事件なんかの取材をしてたんです。凶悪事件の取材先ってダメな人が本当に多い。「どうしてそんなところで人を殺しちゃうの?」と愕然としてしまう。だから、僕はあの記事に非常に共感しました。

吉川 ありがとうございます。当事者もそうですけど、一般的に、貧困への理解はまだ十分ではないのかなと思っていて。私も実際に貧困家庭で、さらに機能不全家族で育ちましたけど、やっぱり精神的にギリギリの状態で、判断能力も低下して、どんどんおかしくなるんですよね。でも、そこで自分がおかしくなっていることに気付ける人もいるし、気付けない人もいる。

 

佐々木 分からないんだよね、毎日生きることだけで精一杯で。

吉川 そうなんですよ。例えば、テレビをずっと垂れ流している家庭って多いじゃないですか。そういう環境ではワイドショーが報道する内容はとても受動的な情報で、意識しなくても目や耳に入ってくるものだから、世間にはよく伝わるし、影響力も大きい。ただ、実際の貧困の連鎖の仕組みや闇みたいな部分はあんまり伝えないじゃないですか。