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特集観る将棋、読む将棋

2019/04/01

なぜ囲碁は90代でも続けられる?

「杉内九段はタイトル獲得2回、本因坊の挑戦者にもなった実力の持ち主です(※囲碁界のタイトル獲得の数え方は、七大タイトル獲得と棋戦優勝を合わせる。将棋界は、八大タイトル獲得と棋戦優勝を分けて数える)。高齢になってから上位に勝ち進むのは難しくなりましたが、ずっと最後まで頑張り続け、晩年も若手に数多く勝っていました。日ごろから節制し、研究に努められていたんじゃないでしょうか。

 囲碁は将棋と違い、引退制度がありません。もちろん、身体がついていかなかったり、気力を失って引退する棋士はいますけど、ほとんどは現役を続けます。いまの棋戦の持ち時間は3時間が主流なので、夕方まで頑張ればいいというのもあるでしょう。

 囲碁も、将棋同様に若手棋士のほうが活躍します。若手のほうが研究していますし、体力でまさりますから。でも、不思議なもので、大ベテランが何十連敗するということはありません」

 現在、将棋の現役棋士で最年長は、71歳の桐山清澄九段。1947年生まれで、1966年にプロ入りした。これまで9人しか達成していない、公式戦通算1000勝(特別将棋栄誉賞)まで、残り10勝を切っている。弟子の豊島将之は二冠を保持している。

「囲碁の現役最年長棋士は、杉内九段の奥様、杉内寿子八段。3月6日に92歳を迎えられました。1月の成績は4勝1敗。女流本因坊リーグの本戦に入り、ベスト24まで勝ち上がりました」

1954年に本因坊戦に臨む杉内雅男九段(右)。2017年現役のまま、逝去 ©共同通信社

■年齢差対局――将棋は藤井聡太のデビュー戦だが……

<年齢差対局>
将棋→62歳と6カ月差  加藤一二三九段(76歳)―藤井聡太四段(14歳)戦
囲碁→79歳4カ月差   杉内雅男九段(95歳)―大西竜平初段(15歳)戦

 加藤一二三九段-藤井聡太四段戦が実現したのは、2016年の竜王戦。藤井聡太にとっては、デビュー戦だった。加藤一二三は藤井聡太との対局で、19世紀から21世紀生まれの棋士、つまり3世紀にわたる棋士との対戦を実現している。

 戦型は、加藤一二三の得意形、相矢倉の「加藤流」。加藤が積極的に攻め続けたが、最後は藤井聡太が即詰みに打ち取った。

「囲碁は2016年3月の王座戦、杉内雅男九段―大西竜平初段戦です。将棋界だとありえない年齢差だと思いますが(笑)、やはり引退制度がないのが大きいです。ただ、15歳でプロは不思議ではないですけど、95歳でプロをやっておられたのは、これまでもないですし、これからだってそうはないでしょう。加藤一二三九段もあの歳までよく戦われたと思いますが、それからさらに20年近くやらないといけないですから。

 囲碁の年齢差の記録はもう抜けないだろうと思うと、奥様の寿子さんがいます(笑)。仲邑菫さんと当たれば、約82歳差です。ただ、仲邑菫さんは日本棋院の関西総本部の所属なので、東京本院の寿子さんと当たるには、まずはお互いに本戦まで勝ち上がるしかない。予選が関東と関西で分かれていますから」

今年3月、女流本因坊戦の対局前に笑顔を見せる杉内寿子八段、92歳。この先、仲邑菫さんとの対局は実現するだろうか ©共同通信社