昨年11月、北海道で男女の喧嘩を仲裁し,暴行被害を受けた女性の名前が報じられると、多くの人が驚いた。その女性は、「クラッシュギャルズ」の一員として80年代の女子プロレスブームを牽引した長与千種さん(53)だったからだ。

 84年、女子プロレス団体「全日本女子プロレス」(以下、全女)でライオネス飛鳥とのタッグチーム「クラッシュギャルズ」で社会現象を起こし、95年から05年まで自ら立ち上げた女子プロレス団体「GAEA JAPAN」(以下、GAEA)で選手兼指導者として活躍。

 05年に「GAEA」の解散と同時に引退した約10年後、2016年に女子プロレス団体「Marvelous」を旗揚げした。かつてスター選手だった長与千種は、いま、指導者として何を思うのか、話を聞いた。(全2回の1回目/#2へ続く

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――暴行事件で仲裁に入ったことが大きなニュースになっていましたね。

長与 女の人がやばい状況になっていて、「これは助けなきゃ」っていう気持ちだけで行ったので、けっこう取り上げられてびっくりしました。

「いい指導者にはなれない」と言われてカチンと

――その際に、現在「Marvelous」で活動していることも話題になりました。2005年に「GAEA JAPAN」解散とともに引退して、2016年に再度「Marvelous」を旗揚げしたわけですが、もともと、もう一度プロレスをやるつもりだったのですか。

長与 いや、戻るつもりはなかったんですよね。ただ、引退中に全日本女子プロレス元会長の松永高司さんが亡くなって、そのときに思うことがありました。

 

――それは、どういったことでしょう。

長与 全女をやめて「GAEA JAPAN」という団体を立ち上げたとき、全女のみなさん(*)にそれを伝えに行ったんですが、「君はすごい選手だったかもしれないけど、いい指導者にはなれない」と言われてカチンときたんですね。

 わたしはその場で「後悔させてやる」って言い返して。「でもね、一言だけ言わせて」と。「その後悔というのは幸せなことだと思って。あなたたちを後悔させるのは、くしくもあなたたちのところで育った選手だから」って。

*……全日本女子プロレスは松永家による同族経営会社で、松永高司をはじめとする4兄弟とその親族が役員を務めていた。