お前がプロレス変えなきゃいけないよ
――このことをきっかけに、プロレスに戻る決意をしたのでしょうか。
長与 実際はその後も迷いましたよ。会長のお墓参りに行って、「どうすればいいんだよ」って2時間くらい文句をたれてみたり。戻るって決めたら、人生すべてプロレスに費やすことになることにも悩みました。
でも、父も膵臓がんで亡くなる前に「ひとりでもいいから、(千種が育てた選手を)もう1回見たい」と言ってくれていたんです。その少し後に、お世話になっていたつかこうへいさんも亡くなられたんですが、つかさんも「千種、お前がプロレス変えなきゃいけないよ」と言ってくれていた。
最終的には、いい親父たちに恵まれたから、親父孝行はちゃんとしなきゃって気持ちになったので、フーッ(息を吐く)、何ができるかな、と。とりあえず、自分で経営していたお店を会社にして、道場を3年ぐらい探しましたね。
ようやく、半人前ぐらいにはなれたかな
――3年もかかったのですね。
長与「女子プロレスには貸せないなぁ」なんて言われたこともあって、すごく下に見られるようになっちゃったなあ、と思ったりもしました。でも、そのうち、いつもの「チクショー、見てろよ」が始まりましたね。
――今日は「Marvelousさん」の道場で取材していますが、とても立派ですね。
今は、「ようやく、半人前ぐらいにはなれたかな」という気持ちですね。何があってもへたれられないので。
いい意味ですべて欲しがる若い選手
――いま、「Marvelous」では10代や20代の若い選手を指導していますね。最近の選手に対して思うことは?
長与 とにかく、セルフプロデュース能力が高いですね。
昔はスマートフォンもないし、パソコンだって会社に備え付けてあるものを使うような時代だったので、情報を手に入れるハードルが高かった。自分をどういう人間に育て上げればいいのかを、誰かと比べることもなく、自分なりの考え方でやるしかなかったんです。
でも、今はレスラーたちがSNSでつぶやいたり、自分の写真や動画をあげたりする。そうすると、こんな試合やってる、あんなコスチューム着てる、すべての情報がそろっている。トレーニング方法にしても、より厳しいもの、よりやったことがないもの、いい意味ですべて欲しがりますよね。
ただ、ひとつだけ残念なのは、みんな一緒に見えるときがある。