振り返ってみると、一番最初にお世話になった会社を半年で辞めている私にとって、この季節は「ああ、自分もこういう初々しい時期があったのかな」と甘酸っぱい気持ちになります。

 エモいところを切り出して文章にしてみたのですが、夢いっぱいだったり、入社するにあたって選ばれてあることの恍惚と不安と二つ我に在りって心境だったりは、自分の心の中の在庫を探ってみてもあまり思い当たりません。そんな私ですので、いまこれから新しい人生を開こうという新入社員に、偉そうなことを言える身分ではない、そんな資格はないのです。

 ただ、「これで書け」とテーマを投げられ、どのような球でもしっかり打ち返すモノ書きのプロとして、これから会社や取引先、お客様の期待に応えてお金を戴く一線に立つ皆さんに、参考になることが100グラムでもあればと思って書いてみました。

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仕事が続かない童貞のエトセトラ
https://note.mu/kirik/n/n4baed1393b19

私のいた時代とは少し違う、スペシャリストの採用

 仕事柄いろんな会社を訪問したり、投資先にお邪魔をしたり、あるいは研修に呼ばれて新入社員の前で喋ったりということがある私としては、等しく職業人の入り口に立って、頑張って環境に適応していこうとしているのだなあという若者たちの緊張が伝わってきます。

 着慣れないスーツに身を固めた、いまだ嘴の黄色い若者たちの前途を輝かしいものにするにも、やはり環境への理解と各々の性格やスキル、特性に対する理解とをすり合わせながら、一歩一歩前に進んでいく、これしか職業人として必要なことはないと思っています。例えば、ご一緒しているある企業では、さっそくオリエンテーションがあり、今年も1時間半ほど新入社員は何をするべきかという小さなワークショップをやったのですが、私のいた時代と違い、いまでは技術者はほとんどがスペシャリストとして採用されています。企業の規模が大きいからというのはありますが、人事もかなり気を遣って、本人が希望する配属先を最大限叶えることを前提に、採用も研修も配属もする、というのが当たり前の世の中になってきた、というのがあります。

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即戦力として期待される若者たち

 一方で、いろんな現地で即戦力を期待される子たちは、わずかな本社研修を経ていきなり店舗や現場へ配属され、そこにいる諸先輩たちからのOJT気味の「身体で覚えろ」的な試用期間を迎えます。大学で一緒だった子たちもいきなり営業のカバンを渡されたり、技術グループのリーダーに「ちょっとこのコード書いてみて」みたいに試されたり、みんなそれぞれの環境で職業人になるための訓練が待ち構えているようであります。

 また、山本家も下の子が保育園を移ったので入園式に出席してきたのですが、そこでもついこの前までリクルートスーツだったであろう正装をした若い女性が新任の担当保育士の一人ですと言って挨拶をしていました。こんな若い子に拙宅山本家の面倒くさい三男が無理なくお世話されるだろうかと思うと不安でいっぱいです。ややこしいし、煩いですよ、うちの三男は。ほんと、よろしくお願いします。しかし、数日もしないうちに真新しいエプロンで率先して面倒くさい三男も他の騒ぐボーイズも立派に捌いている若い女性を見て、ああ、この新しい仕事の門出で幸あれと思うのです。