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記者会見の度に謝罪の仕方を変えた舛添知事

「全てがクロだということではない。誤解だというものもある」

 メディアが注目していたのは発言だけでなく、彼の謝罪の仕方だった。謝罪会見といえば、やはり頭の下げ方などが謝罪の気持ちを推し量るポイントになるからだ。

 平成28年(2016年)5月から、次々と明らかになる政治資金の公私混同疑惑で、東京都知事の舛添要一氏は定例記者会見の度に謝罪の仕方を変えた。1度目は頭を下げる回数こそ多いが、下げていたのは1~2秒ほど。切り抜けられると思っていたのか、言い訳や弁解に終始する。この謝罪に批判が集中すると2度目は姿勢を正し、数秒間深々と頭を下げた。

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 平成も最初の頃は、ゆっくり頭を下げてそのまま5秒保つという5秒ルールが言われたものだが、今ではどれくらいの時間、どんな角度で頭を下げたか、何回頭を下げたかなどが謝罪姿勢の目安のように捉えられている。形だけのパフォーマンスになることもあるが、頭の下げ方が違うだけで謝罪の印象はガラリと変わる。

 ところがその後、クロでないと発言すると、4回目には疑惑の判断を第三者の調査に任せ「厳しい目でアドバイスを頂きたい」と述べた。辞任する気もなければ謝罪もなかったが、批判と非難が集中した。言い訳と弁解に終始して過ちを認めなければ、頭を下げても意味はない。そんな舛添氏に残されていたのは、辞任のみだった。

©文藝春秋 

謝罪に必要だった7つの要素

 これらの会見の中で、山一証券の謝罪会見だけはある意味、成功したといえる。この会見後、山一には残された社員を雇用したいという申し出が数多くあったという。野澤氏自身もその後、多くの企業に請われて社長や顧問を歴任している。

 ではなぜこの会見は成功して、他の会見は失敗したのか。そこには謝罪に必要だった7つの要素が揃っていなかったのだと思う。

(1)過ちや責任を認める
(2)素直に率直に謝罪する
(3)反省や後悔の念を表す
(4)自分の立場をわきまえる(相手目線に立つ)
(5)原因と経緯を説明する
(6)その後の対応や補償、改善策を述べる
(7)謝罪に相応しい振る舞いや服装をする

 自分本位に謝罪したつもりでも謝罪のメッセージは伝わらない。謝罪する相手だけでなく、メディアや世間を納得させないと謝罪とはいえない時代になってきた。