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ディープでマイナーな発酵食品の世界

 選ばれた発酵食品には、その土地でしか知られていないものも多い。

「青森県の〈ごど〉は十和田湖周辺のお母さんたちだけが作っているものです。まず納豆を作って、それに麹とごはんを混ぜて麹発酵させ、その後、乳酸菌が入ってきて、ちょっと酸っぱくなっていくという不思議な食べ物です。宮崎県の〈むかでのり〉は日南海岸の南のお年寄りだけが作っているもので、トゲキリンサイという海藻で作った寒天を味噌漬けしたもの。静岡県西伊豆町田子の〈潮かつお〉は1000年以上前からある食べ物で、かつおぶしの原形です。かつおを塩につけて、1本まるごと軒先に干したものです」

静岡県西伊豆町田子の〈潮かつお〉

 そのような発酵食品を選んだのは、奇を衒(てら)おうとしてのことではない。

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「発酵食品は、その土地の味覚や暮らしぶりの記憶が保存された、いわばアーカイブです。かなりディープでマイナーな発酵食品をあえて選んだのは、この土地だからこそできることを探したいとき、ひいては見た人が自分がいる場所で面白いことを始めたいときに非常に貴重で重要なヒントを与えてくれると考えているからです」

おぐらひらく/1983年生まれ。東京農業大学で研究生として発酵学を学び、山梨県甲州市に発酵ラボを開設。2017年に発表した『発酵文化人類学』(木楽舎)は3万部を超えた。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、様々な活動をしている。

INFORMATION

「Fermentation Tourism NIPPON」
2019年4月26日から7月8日まで渋谷ヒカリエ8F・d47 MUSEUMで開催(11時~20時 入場無料)。
会期中は併設のd47食堂で出展された発酵食品を使った定食が出されるほか、発酵食品をつまみに発酵酒を楽しむ「角打ち」企画やトークイベントなども行われる
https://static.d-department.com/jp/fermentation-tourism-nippon