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勝手に評価 パ・リーグの球団歌をすべて弾き語りして気付いた“6球団の個性”

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/05/19

 自分の事を文春の記者と思っておられる読者の方も多いのかもしれない。しかし自分は生粋のミュージシャンである。名前はDOMI、所属するバンドはMEGASTOPPERと言う。2005年のORIX Buffaloes誕生以来、球団歌「SKY」を今日まで歌ってきた。そしてMEGASTOPPERのライブ活動の他に、ソロでの弾き語りのステージも積極的に行っている。行っているのだが、最近では少々難解な、いやいや大変ありがたいのはありがたいのだが、少々複雑な心境になる“とある問題”と直面するようになった。

2005年に誕生したオリックス・バファローズ

球団歌をカバーした気付いたパ・リーグ6球団の個性と魅力

 それはライブ会場に足を運んでくれるお客さんの大半を野球ファン、それもパ・リーグファンで占めるようになってしまったって事だ。ステージの最前列をユニフォーム姿のオーディエンスが占拠する光景。ライブ会場の風景としてはすこぶる特殊な光景である。まぁそれはそれで楽しいのだが、ずば抜けて反応が良い曲のほとんどが野球ソング。となると、別の大きな問題に直面するのだ。そう「常にネタ切れと隣り合わせ問題」である。

 勿論、ORIXファンならみんなが聞きたい「SKY」や「calling」「PlayBall」などはセットリストに組み込むようにしている。が、それ以外の曲でも野球ソングの演奏を求められるとなるとかなり大変だ。幸いウチのバンドはORIX球団から「SONGSシリーズ」なる球団歌音源を6作リリースしているので野球ソングでセットリストを埋め尽くすのは可能と言えば可能だ。しかしほとんどの曲が先の3曲ほど浸透していない楽曲達である。そう、いまいち盛り上がりに欠けるのだ。

 うーむ、どうしたものか。そこで自分が手にした禁断の果実。それは「他球団の球団歌を歌ってしまえ」という強引なウルトラCだった。パ・6球団の球団歌ならすべて良く知っているし。しかも現役のミュージシャンが弾き語りでそれら披露するのである。それはそれでウケが良いに決まっているだろう。調子に乗った自分は事あるごとに他球団の球団歌をカバーしまくるようになったのだ。そして、ある程度ギターのコードや歌い回しが板についてきた頃、改めてパ・リーグ6球団の個性と魅力を思い知る事になったのである。うん。今回は良い話の予感がするぞ!

一番最初にカバーした球団歌は「We Love Marines」だった

 まず自分が一番最初にカバーした球団歌。それは千葉ロッテマリーンズの「We Love Marines」だ。里崎選手のスペシャルライブでも著名なこの曲。1992年の作品なので割と現代にも馴染みやすい楽曲だろう。BPM(曲の速さ)は126、過去にこのコラムで触れたが126といえば歩く速さの最速値付近である為、楽曲にすれば非常に壮大なイメージになりやすい。且つ、とても爽やかな楽曲と言えるだろう。併せてパワーワードになるのは「大波」、パンチライン(歌詞とメロディの組み合わせで非常に印象強く訴える箇所)は「We Love Love Love」のところだろうか。総じていえば「鼓舞する」といったイメージの球団歌ではなく「讃える」といったイメージだろう。戦いの歌の割に「Love」を強調する千葉ロッテ。そう実は千葉ロッテを球団歌から判断するに「チーム愛にあふれつつ、実は案外優しいんだなこの球団」と言うのが適切な表現なのかもしれない。勝手な評価なのだが。

 次に、松崎しげる氏が歌う「地平を駈ける獅子を見た」があまりに有名な為こちらが7回に歌われているものだと思われがちな埼玉西武。7回に歌うのは「吠えろライオンズ」の方である。BPMは136、1996年の作品とこちらも比較的新しい楽曲だ。「吠えろライオン」を繰り返すこの曲だが、案外パンチラインは「かっ飛ばせライオン」の方なのかもしれない。歌詞的にはチームアンセムにふさわしく前向きワードのオンパレードで、「輝きの瞬間」「勝利をつかめ」「戦いはこれから」とパワーワードがこれでもかと並ぶ。「We Love Marines」と比較すれば、こちらは完全なる「鼓舞型ソング」。ライオンズの野球がイケイケ野球になるのも頷ける。球団歌から判断するに埼玉西武は「難しい事は置いておいて、兎に角前だけ向いて進めば良い松岡修造タイプの球団」なのではなかろうか。同じくこちらも勝手な評価である。

 北海道日本ハムの「ファイターズ讃歌」はどうだろう。こちらは非常に歴史が長く、1974年発表の楽曲である。しかも先の2曲と違って「Bメロ」が存在するので楽曲としては非常に印象的だ。歴々のシンガーに歌い継がれるこの曲、初代のシンガーはアニメソングで有名なささきいさお氏である。歴史のある曲なのでBPMは時代によって上がってはいるのだが、ささき氏のバージョンでは125。ただし、こちらはシャッフルビートと3連符で構成されている為「We Love Marines」よりは速く歯切れの良い印象になるだろう。パワーワードは「鐘」、それも「勝利の鐘」ではなく「勇気を讃えた鐘」である。パンチラインは心の中の茜雲に「明日に向かって飛んで行け」と言い聞かせるところだろうか。こちらはどうだろう。日本ハムを球団歌から判断すると「抽象的な歌詞で照れを隠したのだが、実は誇らしいワードを並べない案外謙虚な球団」といったところだろうか。これも勝手な……。