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 性犯罪被害者が勇気を出して、証人尋問を受けることにした場合、検察は「遮へい」というパーティションを入れる請求をするか、ビデオリンクの請求をする。この請求は、まず認められると言ってよい。

 遮へいが入ると、被告人や傍聴席から、被害者の姿は見られなくなる。しかし、被告人と同じ空間にいること自体、被害者にはとても恐ろしいものであるし、傍聴席に声は聞こえるので、声で知り合いにバレたらどうしようと心配する被害者もいる。

 ビデオリンクだと、被害者は別室に入り、モニターでは質問者の顔しか見えない。法廷で証人尋問をする場合、反対尋問の際は、味方である検察官、中立の裁判官の顔を見て心を落ち着けることも可能だが、ビデオリンクだと、被告人の味方である刑事弁護人の顔しか見えない。

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性犯罪被害者が体験するPTSDのリスク「公判廷に来られない」

 ここで、性犯罪の被害者は大抵PTSDであるという特殊性から、「公判廷に来られない」「公判廷で解離を起こして話せない」という恐ろしい事態が起こる可能性がある。被害者は検察側の証人なので、罪となるべき事実を立証できなければ無罪となってしまう。

 では、被害者はどうすればよいのか。やはり被害者側の弁護士を活用すれば良いのである。

 被害者側にきちんとした弁護士がついている場合、被害者に、反対尋問の事前練習をし、想定できるストレスは全て事前に体験してもらう。また、被害者支援センターやワンストップ支援センターなどに頼んで支援員をつけ、一緒にビデオリンク室に入って被害者の緊張を緩和してもらったり、被害者が証言困難な状態になった場合には、休廷を入れてもらうよう裁判所に合図してもらうこともできる。

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被害者は受け身の対応しかできないのか?

 ここまでを読むと、被害者は、示談の申入れを受けるかどうかを考えたり、証人尋問に応じたりと、受け身の対応しかできないように思うかもしれない。

 しかし、前述の被害者参加制度を使えば、法廷のバーの中に入って、検察官のそばで、公判に参加することができる。

 被害者参加人は、検察官に意見を述べる権利、公判に在廷する権利、被告人質問をする権利、情状について証人尋問をする権利、検察官の論告のように意見を述べて求刑する権利が認められている。被害者参加せずに裁判を全面的に検察官に任せた場合、被害者は、証人尋問で質問されたり、意見陳述をすることはできても、誰かに質問をすることはできないし、そもそも法廷のバーの中に入れないので、被告人が嘘をつき始めても何ともしようがないが、被害者参加すれば検察官の後に質問をすることができる。

 被害者参加人は、被害者参加弁護士をつけて、弁護士の助言を受けながら、被害者参加人の権利を行使することができる。自分で行っても、弁護士を通じて行ってもよい。

 被害者参加すると、非常にスムーズに、事件記録の閲覧謄写をすることができ、自身の事件の概要についても把握しやすくなる。逆に言えば、通常の刑事裁判では、自身が被害者である事件であっても、概要を把握することすら難しい。