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「被害者参加弁護士」の存在

 被害者が自分に弁護士をつければよいのだ。

「刑事事件で被害者に弁護士がつくのか?」と不思議に思う方もいるかもしれない。一般にはまだまだ知られていないが、10年前の法改正により、「被害者参加制度」というものができた。これは、簡単に言えば、一定の犯罪の被害者等が、裁判所の決定により、公判期日に出席し、被告人に対する質問を行うなど、刑事裁判に直接参加することができる制度である。

 強制わいせつ、強制性交等の性犯罪は、法律上、被害者参加することができる事件である。被害者は、被害者参加をする場合、弁護士をつけることができる(こうした弁護士を、被害者参加弁護士という)。

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 被害者参加弁護士は、大まかに言えば、預金が200万円以下であれば、国選でつけることができる。つまり、被害者参加弁護士の費用は、国が負担する。性犯罪の被害者は、若年層が多いため、国選被害者参加弁護士をつけることができるケースが多い。

 被害者参加は、起訴された後にしかできないので、国選被害者参加弁護士も起訴された後にしかつけられないが、日弁連は、起訴前、ひいては逮捕前であっても、一定の要件を満たす犯罪被害者に弁護士費用を援助している。大まかに言えば、強制性交等罪、強制わいせつ罪等の性犯罪の被害者は、預金が300万円以下であれば、この要件を満たす。この援助を受ければ、金銭の持ち出しをしなくて良い場合が多い。

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 司法統計によれば、現在、性犯罪で被害者参加をしている件の9割が弁護士をつけており、そのうち8割が国選である。おそらく捜査段階で、被害者が、代理人として弁護士をつけ、その弁護士が起訴後に被害者参加弁護士となっているのだろうと考えている。

 被害者支援の知識と技術のある弁護士がついた場合、さまざまな選択のメリット・デメリットを被害者に説明し、一緒に判断することができる。

 また、被害者側に弁護士がついた場合、刑事弁護人が直接被害者に連絡をすることは、弁護士職務基本規程により、できなくなる。

実際の裁判では何が起きるか

 続いて、実際の裁判で何が起きるかを見ていこう。現在は、被害者の氏名が記載された起訴状は、被告人本人には送達されるが、法廷で、被害者の氏名が読み上げられることはない。氏名・住所などの被害者特定事項は、検察官が、裁判所に申し入れることによって、秘匿することが、法律上認められている。性犯罪の場合は、被害者秘匿決定がなされると考えてほぼ間違いない。