「今ある法律」で負担が最も少ない道は
私は、被害者参加弁護士として性犯罪の刑事裁判に参加してきて、一連の手続きがいかに被害者にとって負担かを見てきた。特に、被害者の氏名が書かれた起訴状を、被告人に送達することに関しては、2017年の刑法改正の附帯決議でも取り上げられ、見直し中ではある。
現行法や現行制度に課題があるとはいえ、裁判官・検察官・弁護士といった実務法曹は、今ある法律に従って仕事をするしかない。もしあなたや身の回りの人が当事者の立場になってしまったら、「今ある法律」という枠の中で、性犯罪被害者の負担が最も少ない道を選んでいただければと思う。
具体的には、性犯罪被害者支援の知識と技術のある弁護士をつけることをおすすめする。そうした弁護士を探す方法として、どの地域に住む人にも勧められるのは、ワンストップ支援センターに電話することだ。
ワンストップ支援センターは、性暴力被害者に、医療支援、心理的支援、捜査関連 の支援、法的支援等の総合的支援を、被害直後から提供するものである。ワンストップ支援センターは、昨年10月、ようやく全ての都道府県に設置された。弁護士による二次被害があってはならないので、各地のセンターが知識と技量のある弁護士を揃えている。
「今」を生きる私たちに、「今」に適した法律を
2017年になされた性犯罪に関する刑法改正は、110年ぶりに性犯罪被害者の声が国会に届いたものであった。2020年には、この改正の「附帯決議」に基づく「見直し」が予定されている。110年も経てば、女性の人権に関する意識も、性犯罪被害者の心情に関する知見も、別次元に進歩している。「死ぬ気で抵抗しなければ、犯人が逮捕されない」などという都市伝説が生きていてはいけない。「今」を生きる私たちに、「今」に適した法律を! これが私の願いである。