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うつヌケ経験から分かった「なぜ5月は気分が落ち込んでしまうのか?」

小説家・貴志祐介×漫画家・田中圭一 『うつヌケ』対談#2

「気圧の変化」は気分に影響する?

貴志 その3つの月だとどれが一番辛いですか。

田中 僕の場合は3月ですね。動物の体ってよくできていて、「食欲の秋」で冬越えのために蓄えた脂肪を春に排出しようとするらしいです。そのとき肝臓がいつもより活発に動いて疲れがでるので「春眠暁を覚えず」になる、と治療中に読んだ本に書いてありました。それと気温差のダブルパンチでくるので、3月は鬼門です。

貴志 気圧の変化の影響はどうですか? 私は台風が近づいてきたときは変調を感じるのですが。

 

田中 僕は気分が落ち込むことはないですが、物理的に体が動かなくなりますね。前に低気圧で苦しんでいる人が集まって東京ドームツアーをしたらいいんじゃないか言っている人がいました。東京ドームは人工的な高気圧ですから。

貴志 高気圧のシェルターですね。効果はあったんでしょうか。

田中 それが全然意味がなかったらしいです(笑)。やはり人工的に作った高気圧では天候には太刀打ちできなかったみたいです。

貴志 5月をむかえて、また谷間の時期が来ますけど、うつ、あるいはうつ気味で苦しんでいる人に何かアドバイスはありますか?

田中 うつで辛いのは、理由がわからずに気分がドーンと落ち込むことなんです。親が死んだらみんな落ち込むと思いますけど、何の理由がなくてもそれくらいの気分の落ち込みと不安が襲ってくるんです。なぜ落ち込むかわからないのが最大の不安要素なんですね。

 

貴志 原因がわかれば気持ちも変わると。

田中 3、5、11月は誰でも不調になるんだから、6月になればまた気分が戻るよ、というくらいの心持ちでいるのがいいんじゃないでしょうか。

貴志 私も運動不足にならないよう外に出て、谷間の季節を乗り切りたいと思います。今日はありがとうございました。

写真=山元茂樹/文藝春秋

【#1】うつ病の人はド派手な色を選ぶ?――「真っ赤なリュック」と「グリーンの車」を買った理由 より続く

たなか・けいいち/1962年大阪府生まれ。近畿大学法学部卒業。大学在学中の1983年小池一夫劇画村塾(神戸村塾)に第1期生として入学。翌84年、『ミスターカワード』で漫画家デビュー。86年開始の『ドクター秩父山』がアニメ化されるなどの人気を得る。大学卒業後は玩具メーカーに就職。主にパロディを題材とした同人誌も創作。最新刊は『若ゲのいたり ゲームクリエイターの青春』。

 

きし・ゆうすけ/1959年大阪府生まれ。京都大学卒業。96年『十三番目の人格 ISOLA』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、100万部を超えるベストセラーとなる。2005年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。その他の著書に『ダークゾーン』『雀蜂』『ミステリークロック』など。

うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち

田中 圭一

KADOKAWA

2017年1月19日 発売

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