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うつヌケ経験から分かった「なぜ5月は気分が落ち込んでしまうのか?」

小説家・貴志祐介×漫画家・田中圭一 『うつヌケ』対談#2

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3月、5月、11月に気分が落ち込む

貴志 一度うつのトンネルを抜けても、そのあとぶり返しがあったとか。完全に治ったわけではなかった?

田中 「突然リターン」と言っているんですが、治ったあと何の前触れもなくうつがやって来る日があるんです。原因がわからないのがたまらなく嫌で、そこから必死の調査を始めました。

貴志 それは何が原因はわかったんでしょうか。

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田中 私の担当医に言わせると、うつは一度治ってそのまま快調というわけにはいかないんですね。何度かの踊り場を経て、階段状に回復していきます。「突然リターン」とは、要はその踊り場だったわけですが、これには何か法則があるんじゃないかと睨んでました。僕は、うつの間その日の気持ちを「普通」「やや辛い」「辛い」の3段階で記録していたんです。3年分の記録があったのでこれをグラフ化してみたら、見事に3月、5月、11月に気分が落ち込むことがわかりました。

 

貴志 そこが気分の谷間の季節になっていると。

田中 そうなんです。よく寒いと気分が落ち込むと言われるんですが、意外とそうでもない。いま言った月は数日おきに暖かくなったり寒くなったりと、気温差が激しい時期で、それがうつを呼び込むのではないかと。

貴志 私も夏はプールで泳いで運動するんですが、秋になるとめっきり家に閉じこもってしまって。そうすると気分が鬱々としてきます。

田中 文筆業だとずっと机に座って体を動かしませんからね。ちばてつやさんも「漫画家は適度に運動して、ちゃんと睡眠を取れ」と早くからおっしゃっていました。