今年の6月16日まで、上野の国立科学博物館では特別展『大哺乳類展2』をやっているんですよ。

 皆さん、もう行きましたか。

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テーマは『生き残り』

 拙宅山本家には小学校4年生、3年生と年長さんという息子3人がおるわけなんですが、今回の大哺乳類展は本当に楽しくて大興奮でしてね。3月21日に始まって以来、もう10回近く足を向けたでしょうか。科学博物館のリピーターズパスを持っていれば980円になるんですが、小学生は600円で、毎回子どもたちの手を引いて入るたびに2,180円かかります。ちょっとした映画館に通い詰める感覚があります。

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山本家の三兄弟は、国立科学博物館のリピーター (筆者撮影)

 何がいいって、この大哺乳類展のテーマ。すなわち『生き残り』。

 つまりは、私ら生物は、生き残り、子孫を残し、そして死んでいく。そのサイクルのなかで、気の遠くなるような昔からさまざまな作戦を練り、身体を作り替えて、生き残ってきたという歴史が、この特別展に詰まっておるわけであります。

 ある者は敵から逃れるために皮を伸ばして木から木へ滑空し、ある者は食事をしたくて海に戻り、またある者は狩りをするために獲物よりも速く走る能力を身に付けた。ヤバイ。生物の生き残りに対する切実な思いが、世代を超えて体そのものを作り替えてしまうわけなんですよね。新たな種が生まれ、多様化が進む一方で、環境に適応できなくなった目(もく)は傘下の種が絶滅していき、目ごと衰退していく。

馬刺しとか美味しく食べている場合ではない

 日ごろよく見るお馬さんのいる奇蹄目(ウマ目)、2006年ごろに分子生物学によるDNA解析で実は同じ蹄を持った似た生物である鯨偶蹄目(ウシとかラクダとかシカとか)よりも、食肉目(猫ちゃん)に近いことが判明した。マジか。しかし、進化の歴史の中でお馬さんの一族は種の絶滅が起こり、ウマ目全体としては衰退の方向に向かっているという。これはマズい。馬刺しとか美味しく食べている場合ではないのです。

何度きても新しい発見がある(筆者撮影)

 また、日ごろ食べる食物に応じて、歯もまた進化する。草食の動物はすりつぶす臼歯を発達させ、魚を丸呑みするイルカは捉えた魚を逃がさないために同じ形をした歯が整然と並んでいるのです。ハダカデバネズミはあらゆる動物よりも速く歯が生え、その頑丈な歯で地中を掘りながら前に進んで暮らしている。何という必要に応じた進化の歴史と驚くべき多様性。