頭脳格闘技の将棋と囲碁。将棋では16歳の藤井聡太から71歳の桐山清澄九段、囲碁では10歳の仲邑菫初段から92歳の杉内寿子八段が現役棋士として戦っている。盤に向き合うものは老若男女を問わず、びっくりするような年齢で記録を打ち立てることも珍しくない。
昨年、48歳の羽生善治は竜王を失い、27年ぶりに無冠になった。将棋界で最年長タイトルホルダーは、35歳の渡辺明二冠。広瀬章人竜王と佐藤天彦名人は30代、ほかのタイトル保持者3人は20代だ。16歳の藤井聡太がタイトル戦に登場すれば、ますます競争は激化し、百戦錬磨の羽生といえどもタイトル獲得は容易ではない。だが、将棋でも囲碁でも、60歳を超えてもタイトル獲得や棋戦優勝を果たした棋士がいた。
今回は、将棋と囲碁のタイトル保持の最年少、最年長記録を比較していく。取材に協力してくれたのは、毎日新聞社の山村英樹さん。毎日新聞社(将棋は名人戦・順位戦と王将戦、囲碁は本因坊戦を主催)で将棋と囲碁を担当して、30年以上がたつ。
まず押さえておきたいのは、将棋界と囲碁界で「タイトル獲得」の数え方が違うこと。将棋界は、8つのタイトル(竜王、名人、叡王、王位、王座、棋王、王将、棋聖)獲得と棋戦優勝を分けて数える。囲碁界は、七大タイトル(棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖、十段)獲得と棋戦優勝を合わせて計算する。
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タイトル獲得の史上“最年少”記録は?
将棋→屋敷伸之の18歳6カ月(1990年度前期の第56期棋聖戦)
囲碁→井山裕太の16歳4カ月(2005年度の第12期阿含・桐山杯)
1989年、羽生善治が初タイトルの竜王を獲得。19歳2カ月のタイトル獲得は当時の史上最年少記録を更新したが、1年もたたないうちに塗り替えたのが屋敷伸之だった。
1989年、第55期棋聖戦五番勝負で中原誠棋聖にタイトル初挑戦。17歳10カ月でのタイトル挑戦は、現在でも史上最年少のタイトル挑戦だ。五番勝負はフルセットのすえに敗退したものの、第56期も挑戦権を獲得。今度は2連敗から3連勝し、18歳6カ月でタイトルを獲得している。1991年1月、森下卓の挑戦を退け、タイトル防衛の最年少記録(19歳0カ月)も達成した。
藤井聡太は2002年7月19日生まれで、現在は16歳9カ月。屋敷の記録を更新するには、ここ1年が勝負となる。