老化の始まりを左右する「腎精の消耗」とは
では、人によって生殖能力や老化現象の時期が異なるのはなぜか。ここで前述した「腎」という機能がキーワードになる。生殖能力とともに、老化をつかさどるのが「腎」である。
櫻井氏はこう説明する。
「“腎は精を蔵し、発育、生殖をつかさどる”と、東洋医学では言われます。この精とは、生命の根本をなすもので、親から受け継いだ先天的な精と、毎日のよい食事で補充する後天的な精があり、その両方が備わって充実します。腎精が充実すると、男子は精子が作られるようになり、女子は排卵が起こり、性欲も盛んになります。
やがて先天的な精は消耗し、食べ物による後天的な精が追いつかなくなると、腎精の消耗が目立つようになる。いわゆる老化の始まりです」
この老化現象を「腎虚」という。
「セリフが覚えられない」EDだけじゃない"腎虚"がもたらす症状
腎虚に顕著な症状は、耳と「二陰」に現れるという。二陰とは、生殖器、尿道外口、肛門である。1回の排尿量が少なくなったり、排尿に時間がかかったり、夜間尿、尿失禁、ED、早漏、生理不順、耳鳴り、聴力減退といった症状だ。
「腎は骨や脳との関係が深く、腎虚になると、足腰が弱り、物忘れを気にするようになります。記憶力なども腎精によって維持されるのです」(櫻井氏)
ここではたと思い出したのが、蛭子さんの話である。健康診断を欠かさず、ふつうの人より元気があると主張するが、仕事のことでこんな悩みを漏らしていた。
「ドラマのセリフが5行くらいなのに、覚えられなくなったんだよ。漫画を描いていても、思いついたアイディアをすぐ忘れる。記憶力がすごく悪化してる」
また、階段を上るのがきついとも言う。蛭子さんは腎虚だったのだ。年齢を考えれば周期どおりだが、櫻井氏は「例外がある」と言う。限界年齢は、延長が可能だというのだ。
(後編に続く)
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