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日本のAV業界が強い理由

 彼女が提案した性的嗜好の蓄積について、私は同じ話を聞いたことがある。それは、アダルトビデオ界のパイオニア、村西とおる監督に「なぜ日本のAVは世界を席巻しているのか」と聞いた時だった。理由は「ありとあらゆるシチュエーションを提供しているからです」と言う。

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「セックスの達人とか、ゴッドハンドというのは、まったく意味がありません。AV業界がなぜ生き延びているのかというと、観ている方々が自分のストライクゾーンは何かを知らず知らずに探し求めているからです。性欲の琴線にビビッとくるシチュエーションを提供し続けることで、ご覧になった方々が実生活で探求される。セックスの最高点は、それぞれがご自分で見いだすものなのです」

 性に興味がない女性たちの多くは、親から強い貞操観念を植え付けられたり、セックスは悪いものだと性に対してマイナスの教育を受けている人だ。その結果、大人になって苦労する。

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 日本の医学界も決して進んでいたわけではない。性交疼痛症で夫とのセックスが苦痛だったり、夫に求められても性欲がわかず、積極的になれない女性たちは、これまでも医師に相談してきた。しかし、「ムードの問題でしょう」と、ローションを渡される程度だった。病院にまで足を運ぶのは、ローションをすでに試している女性である。

ヒトは脳でセックスをする

 我慢する女性たちが多いのを知って、前出の関口氏らは、性機能障害の治療を診断に取り入れていった。

「例えば、出産後の女性や老化の症状として、骨盤臓器脱といって、膣から子宮や膀胱や直腸がべろんと出てくる病気があります。夕方、疲れてくると出てきて、朝に戻ったりする。そういう人たちもセックスをしています。

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 膣が緩まると、感度はなくなるのですが、女性は男性と違って、性機能のスイッチは局所だけではありません。外陰部の性感が落ちても、乳首など他のところにオーガズムを感じるところが移るんです。でも、明らかに満足度は落ちる。そこで、骨盤臓器脱や膣弛緩症、尿漏れなどの予防と治療を、トータルでやろうと思ったのです」

 性中枢は間脳にあり、脳でセックスはできる。長寿化社会によって体は老化しても、性欲が衰えることはない。その時、どうするかが、高齢化社会の今後のテーマになるはずだ。

 ちなみに、これまでに東洋医学による性の力を強化する方法を紹介してきたが、漢方にはオーガズム障害の治療法はないと、関口氏は言う。

「女性がオーガズムを感じられないのは、男性に問題があると、漢方の古典では言い切っています。男性のマッサージや優しい前戯によって治るんだそうです」

 耳の痛い話である。

次回は中国医学の秘伝「精力を高める食べ物」に迫る

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前編:ヒトは何歳までセックスできるのか?
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後編:「炒めたタマネギ」で性欲を高める

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後編:「元気ですか?」の語源と「体内時計」で読み取る正常なセックスとは