「これで悩みは解決する」中国人が自信満々に豪語する精力剤
2005年11月、当時20代だった青木洋満氏は、小林製薬の大阪本社に出勤すると、すぐに関西空港から香港に飛んだ。明日には再び会社に出勤するため、香港滞在はタイムリミットがある。大学院で生化学を専攻した青木氏のミッションは、勃起サプリの参考製品を収集することだ。
香港で行われた健康食品の展示会には、世界中の企業が視察に来ていた。中国と台湾のメーカーが、高麗人参から「コブラの粉末」が入った強壮剤にいたるまで様々な健康食品を売り込む。青木氏が片っ端から商品を手にとって成分表を見ては、「これは、なぜ効くのですか?」と聞く。すると、中国人は決まってこう豪語した。
「これで悩みは解決する」
誰もが「これを飲めば、バッチリ」と答えるばかり。中国4000年の歴史が実証していると言いたいのだろうが、製薬企業としては、過去に消費者からどんなクレームがあったのか、また学術的な文献で実証されているかを知る必要がある。
青木氏は20品を選んで購入した。1週間に1品ずつ、自ら体を張って「主観的体感」を試してみた。
青木氏が振り返る。
「どれも体が熱くなる感じがして、特にコブラの粉末を使ったものがそうでした。しかし、勃起はしません。食生活が貧しかった時代は効果があったのかもしれませんが、栄養価が高まった現代では、疲れた時にしか体感しないのかもしれません」
思いこみで効果を期待!?
精力剤の効果については個人差もあるのだろうが、浜松町第一クリニックの竹越昭彦院長は「思いこみが大きい」と言う。
「サイの角には媚薬作用があると言われて、マレーサイは乱獲された結果、絶滅寸前になりました。しかし、スウェーデンの学者がサイの角を調べたところ、人間の歯と同じ成分でした。
また、オットセイのペニスには交感神経刺激剤であるヨヒンビンが入っています。服用するとドキドキするため効果があるように感じますが、人間のペニスに血流を送っているわけではない。効果があったとしたら、思いこみの力なんです」