厚生労働省が2017年に発表した統計によると、日本人の平均寿命は男性「81.09歳」、女性「89.26歳」と、過去最高を更新し続けている。「人生100年時代」と言われるなか、「QOL(生活の質)」の向上は、現代人にとってますます重要な課題となっている。中でも性生活は、人間らしい暮らしを送る上で避けて通れないテーマだろう。人は何歳までセックスできるのか――かつて「週刊文春」で話題を呼んだ本企画は、これからを生きる現代人にとっても示唆に富む。あらためてここに公開する。

 今回のテーマは性教育。性問題を隠したがる"恥ずかしがり屋"の日本で密かに起こるコワすぎる現状を取材した。(前編より続く)

※「週刊文春」2012年9月20日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。

お店で山積みのイギリスと、通販の日本で違う「性文化」

 新聞広告をうち、通販を開始すると、瞬く間に反響を呼んだ。また、コールセンターには「女性のオペレーターと代わってくれ」という中高年の電話が増えた。延々と自分の勃起自慢をするセクハラ調の電話が増えたのである。

 現在、エディケアに限らず、様々な企業が“活力サプリ”の製造に乗り出している。勃起力の王道である鹿茸(ろくじょう=鹿の幼角)を筆頭に、ニンジンの一種であるトンカットアリ、豚の睾丸エキス、マカなどの他、女性用には女性ホルモンの分泌を活性化させ、潤いを与えるソウヒョウショウというカマキリの卵鞘を配合した商品がある。

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 一方、失敗も多い。医療ジャーナリストが言う。

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「女性用バイアグラをある製薬メーカーが開発しようとしましたが、失敗しています。また、日本の大手製薬会社は、犬が間違ったものを飲みこんだ時に、吐かせるペット用の薬が犬を勃起させていることに着目しました。同じ成分を使って、人間用に開発したのですが、勃起はするもののセックスをする時に吐いてしまうので大失敗でした」

 脳に作用して、性欲を起こさせて勃起を促す薬も開発されたが、性犯罪を起こすという理由で認可されていない。

 こうした開発が盛んなのも、高齢化社会をビジネスチャンスと捉えているからだろう。ただ、海外と違うのは、前述のピクノジェノール商品をイギリスの高級デパート「ハロッズ」では、山積みにして販売しているのに対して、日本では通販でしか売れない点だ。日本ではまだまだ性を隠したがる文化があるからだろう。

EDのうち3割は「精力剤」が効かないという問題

 次に、日本政府が封印しようとする勃起治療薬がある。G8を始め、世界80カ国と2自治領で認められながら、日本で認可されない、プロスタンディンという陰茎海綿体注射だ。

「厚労省に掛けあい続けて12年目の昨年、ようやくテスト薬としてのみ認められましたが、まだ治療薬として認められていません」

 そう言うのは、「定期的にバイアグラ」性のアンチエイジングが寿命を延ばす理由で「アンチエイジングのための射精のすすめ」を提唱した川崎医科大学の永井敦教授である。

 陰茎海綿体注射とは、その名の通り、陰茎に直接注射をうって勃起させるもので、2時間ほど持続する。

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 永井教授に聞こう。

「EDのうち2割から3割の人は、バイアグラやレビトラが効きません。一番多い理由は、勃起神経の損傷です。例えば、前立腺ガンの手術によって勃起神経が損傷したり、直腸ガン、膀胱ガン、骨盤内の手術で勃起神経に影響が出る場合があります。神経から一酸化窒素が出て勃起するのですが、神経や神経周辺の血流障害で一酸化窒素の量が減って勃起しないのです」