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パイプ椅子を並べた客席には空席が目立った

 全国津々浦々で語られる小泉進次郎の言葉を聴き続けて5日間、前回までと違う空気を感じる。同じ地点で演説した過去の様子と比べても、集客力が1~2割ほど落ちているように見えるのだ。

 6日土曜日、横浜みなとみらい地区のどまんなか、桜木町駅前で行われた街頭演説が象徴的だった。週末の夕方5時過ぎという「ゴールデンタイム」なのに、小泉を見に来た人は300人もいない。大勢の通行人が小泉の姿を見ても足を止めることもなく、目の前を通り過ぎていった。

 

 このことだけで「小泉人気に陰りがある」と言うつもりはない。自民党の楽勝ムードや告知不足も関係している。4人区の神奈川県選挙区は公明党現職も立っている地域なので、創価学会関係者の大動員も望めない。神奈川は小泉の地元だから、目新しくもないのだろう。

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 だが、翌7日日曜日の夜7時から佐賀市内の体育館で行われた演説会でも、閑古鳥が鳴いていた。立候補している自民現職は有利な戦いを演じているものの、約500脚のパイプ椅子を並べた客席には開始時間を過ぎても空席が目立った。客席と演壇の間には200人ほどが座れる大きなござも敷かれていたが、腰を下ろしている人は30人ほどしかいなかった。

 演壇に立った小泉は、体育館に吹き抜ける「すきま風」を感じ取った。

「私、さっきから気になっているのは、ござと客席の間にある『空間』なんですよ。だから、私が動きますから、みなさんと距離があるのはいやですから、私が間に入って、みなさんに近いところからやらせていただきます」

 冒頭にそう切り出し、ござに上がり込んだ。そして、候補者と一緒に客席最前列の前に立ったのだ。そうすることで閑散とした会場を、四方八方からチャレンジャーを見つめる「リング」のようなスタイルに変えた。小泉が「みなさん、日曜日でもう遅い時間だから早く帰りたいでしょ」と、マイクで突っ込みを入れるほど疲れを見せていた聴衆たちの目が、一瞬で変わるのがわかった。

 

「なんかギラギラ感がなくなっちゃった」

 小泉は30分間にも及ぶ長い演説の中、さっきまで会場に漂っていた不思議なムードの理由をこう説いた。

「今回の選挙は率直に言って盛り上がりに欠けていると思います。もしかしたら衆院選とダブルかな(と思われていた)。ダブルじゃなくなったら、世の中は参院選までなくなったような雰囲気になってしまった」

 だが、ある地方で複数の遊説先に毎回現れる追っかけファンはこうも漏らす。

「最近、友達に『これからシンジローを見に行く』と話しても、『あの人、何かやった?』と言われてしまう。なんかギラギラ感がなくなっちゃった。余裕のない感じと焦りが顔に出るところが魅力だったのに、なんて言うんだろう、芸能人みたいな作り笑顔が上手になって、普通になっちゃった」

 

 今回の遊説では年金問題に時間を割いている。

 1か所でマイクを持つのは、これまで通り約15分。話せるネタは2、3本がいいところだ。

「今日は投票を決めかねている人に、まず年金の話をしに来ました。『2000万円足りない』と言う前に今の年金はどのような制度か。これがほとんど知られていない」

 ここから「授業」が始まる。