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小泉進次郎の「年金2000万円」演説にロスジェネが感じたすきま風

「100年後のことはわかりません。そして不安がゼロになるとも言いません」――ルポ参院選2019 #2

2019/07/09
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参議院で多数派を握って法律を通さなければ……

「1つ目のポイントは、70歳以上でも『年金、まだ待てるよ』という人がいた場合、それを実現できるように選択の幅を上に延ばしていく。私は先ほど『70歳で42%増える』と言いました。これは1年繰り越すごとに年金の額は8%(正確には「8.4%」)上がるという仕組みです。だから、70歳まで待って42%上がるということは、71歳まで1歳待つと65歳からもらうよりも年金額はなんと1.5倍になるんです。そういう形で、長く働いている方にも選択肢を増やしていくのが、1つ目。

 そして2つ目の改革のポイントは、働きながらある程度の稼ぎがあって年金をもらうと年金額が下がる。それをだんだんやめていきます。働いて稼ぎがあったら年金はカットする制度を続けていくのは、人生100年時代、長く働く時代に働くことを阻害する。そんな制度は誰も幸せにならないという考えの下で、やめていきます。

 そして3つ目、会社で働いている人は厚生年金。農家、漁師、林業家の方、個人事業主の方は国民年金。働いている方の中には『国民年金だけ』という方がいるんです。そういう方のことを考えたら、ひとりでも多くの方が厚生年金に入っていけるようにすることで、将来の無年金、低年金を防いでいく。これが3つ目。

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 この3つを実現するには、衆議院だけではできない。参議院で多数派を握って法律を通さなければ、今の言ったことは実現できません。この選挙区での勝利が、全国的に自民と公明が多数派を握れるか、実現するかに直結するんです」

 うなずく人が多いのは、2つ目の改革だ。いわゆる在職老齢年金制度の問題である。月給と年金の合計が一定金額(60~64歳は28万円、65歳以上は47万円)を超えたら、超過分の半額相当の厚生年金が減らされてしまう。小泉が中心となって若手議員でつくる改革チームは3年に及ぶ議論の末にその見直し案を提示した。すると、6月に発表された安倍政権の経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に採用されたそうだ。

 

「政治家が不安をゼロにすることはできません」

 小泉はその実績をアピールした上で、必ずこのネタを出す。

「ちなみに私や国会議員は国民年金しかありません。議員年金はありません。私のオヤジが総理だった頃に廃止されたから」

 その瞬間、どの会場でもどっと笑いが起こる。そしてこう締めくくる。

「私はもう、『百年安心』とは言いません。100年後のことはわかりません。そして不安がゼロになるとも言いません。なぜなら、政治家が不安をゼロにすることはできません。でも不安を少なくすることだったらできる」

 不都合な事実を詳らかにする正直な態度にも聞こえる。

 だが、かつて小泉は「22世紀へ。人口減少を強みに変える、新たな社会モデルを目指して」と銘打って社会保障改革の青写真を示したこともある。当時はよく、「政治家が22世紀を語ったのは初めて」と胸を張っていたが、こんどは「100年後のことがわかりません」と言い出してしまう。

 どうしたものか――。

写真=常井健一

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