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「BLは『関係性』を描くものだと思う」

――ところで、腐女子がBLのCPを決めるときは、どういう基準があるんですか?

はちこ 個人的な意見ですが、BLは関係性を描くものだと思うんですよ。なにが強いか弱いか、人と人との関係性をBLのフィルターで見ると簡単に理解できる。「あ、この人は攻めだ」みたいな。そのようなフィルターを通して世界を語り、思考する者が腐女子である、と自分は定義したいです。

 ただし、「生モノ」は取扱い注意です。周囲の人を妄想の対象にしない、実在のアイドルを対象にした場合は本人や関係者の目に触れないように注意する、というのが腐女子のマナーなんです。もっとも最近は、マンガや一部の韓流アイドルなんかは腐女子受けを意識した演出をおこなう(賣腐mài fŭ)をみずからおこなうようにもなっていますが……。

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――力関係ですか。とすると、毛沢東×周恩来のBLも作れそうですね。

はちこ いや、ガチな政治系の生モノは中国ではやっちゃダメですよ。というか、そもそも毛沢東で妄想したくないし……。

――いや、しかしたとえば台湾では『馬皇降臨』という馬英九や陳水扁をパロディにした、ちょっと腐に使えそうな絵柄の政治コメディ漫画があります。その気になれば、たとえば習近平でもBLを作れるのではないか。

はちこ いや、嫌ですよ! ……しかし、仮に本気で考えてみた場合、習近平は「使いにくい」ですね。胡錦濤のほうがずっと使いやすいです。習近平をBLにするなら……。うーん、「総攻め」ならイケなくもないかな。いろんな人と組み合わせるけれど、習近平は常に「攻め」の立場になる。

2018年3月17日、全人代の席上で握手する王岐山(左)と習近平(左2番目)、それを見つめる李克強(右) ©AFLO

 

――なるほど。習近平×李克強、習近平×王岐山。確かに力関係が描かれます。

はちこ ……この話題、いろんな意味でしんどすぎるのでやめましょうよ。

めちゃくちゃ多い「腐女子用語」

――そういえば私(=安田)も、8年ぐらい前に某出版社の中国語辞典の新語や流行語の項目を執筆したことがあるんです。で、その際に当時の中国のオタク用語をネットからかなり多く収集したのですが、腐女子用語がめちゃくちゃ多かったんですよ。

「攻受gōng shòu(攻めと受け)」とかその程度ではなく、「弱氣攻ruò qì gōng(弱気攻め)」とか「腹黑受fù hēi shòu(腹黒受け)」とかいろいろあって。これは何なんだ……、と思いながら作業をしていた記憶があります。腹黒受けって、なにか誘惑してくるような感じですか。

はちこ 誘惑するのは「誘受yòu shòu(誘い受け)」。腹黒受けは、たとえば『デスノート』のLが受けのパターンだとそうなりますね。受けだけれど策を持ってる系です。

 ちなみに弱気攻めは、ヘタレだけれど攻め。「強攻強受qiáng gong qiáng shòu(強気攻め強気受け)」「強攻弱受 qiáng gong ruò shòu(強気攻め弱気受け)」「弱攻強受 ruò gong qiáng shòu(弱気攻め強気受け)」……とかいろいろあって、たとえば「強攻強受」は互角の力を持つライバル同士がぶつかり合う感じです。