――なるほど。
はちこ 結果、1999年ごろからは中国国内で『耽美季節』『阿多尼斯(アドニス)』などのBL雑誌が誕生します。A4サイズで、めちゃくちゃ分厚い雑誌でした(笑)。内容は日本のBL小説やBLマンガの翻訳です。
いまから考えると、著作権的な面では非常に危ういのですが、ともかくBL文化が中国国内で明確に意識されはじめたのはこの時期からです。当時は『絶愛』『間の楔』『富士見二丁目交響楽団』『炎の蜃気楼』あたりのBL小説が読まれていました。その後、2005年ごろまでは『JUNE』系の耽美的な作品が多く受容されていましたね。
――耽美というと、男子には『パタリロ!』くらいしかイメージが湧かない世界ではありますが……。そういえば中国語でも「耽美 dān mĕi」という単語がありますね。
はちこ はい。BL的な表現は、中国語ではもともと「耽美」と呼ばれていました。ただ、耽美は美意識が高くて世界観の設定もでかい。いっぽうで「BL」は、もっと甘くてフワフワしているイメージです。アニメやマンガを原作にした二次創作を作るうえでは、BL的な表現のほうが作りやすいですね。
ここからは個人的な経験になりますが、2000年代に中国ではネット掲示板がブームになって、そこに小説を投稿する人が増えはじめます。小説のなかには二次創作も多かったですから、徐々に「耽美」よりも「BL」的な表現が増えていくことになりました。小説の一次創作も生まれはじめます。
スパイダーマンは「総受け」
――なるほど。ついに2000年代後半からは中国独自の腐女子コンテンツが生まれはじめた。
はちこ そうです。2010年代からは二次創作の題材も拡大して、日本のコンテンツ以外の二次も増えていきます。たとえば欧米系とか。最近は中国系のものも人気です。
――欧米系ってどういうものですか?
はちこ アメコミやドラマを原作にしたものですね。『アベンジャーズ』のキャプテン・アメリカ×アイアンマンとか、スパイダーマンは「総受け」とか。BBCが放送していたドラマの『SHERLOCK/シャーロック』も題材として好まれます。
あと、中国系だとヒット小説の『盗墓筆記』『全職高手(マスターオブスキル)』もよく題材になります。ほかには人気ドラマの『琅琊榜』『七侠五義』『偽装者』も人気ですね。