「鬼畜攻め」に「ツンデレ受け」
――細かすぎる。文字面を見る限り、日本語からそのまま流入した語彙が多いんですか。
はちこ そうですね。ここらへんの語彙は10年くらい前に定着して、現在でもほとんど変わっていないんです。あとは、ご主人様に忠実に受けに回る「忠犬受zhōng quǎn shòu(忠犬受け)」とか、ツンデレ的に受ける「傲嬌受ào jiāo shòu(ツンデレ受け)」とか、ハードに攻める「鬼畜攻guǐ chù gōng(鬼畜攻め)」とか。中国語由来の語彙だと、バカっぽく受ける「小白受xiǎo bái shòu(おバカ受け)」などもあります。
――なんだこの豊穣な文化は。
はちこ なんなんでしょうねえ……。
中国の表現規制 BLはどう発表される?
――最後の話題になりますが、中国では表現規制が厳しいですよね。中国人腐女子が作った国産のBLは、どういう手段で発表されているんですか?
はちこ ネット小説がいちばん多いですね。最近は以前よりも表現規制が厳しくなり、「非科学的な内容はダメ」「歴史上の偉人を侮辱する表現はダメ」といったいろいろな制限があります。小説サイトの編集者が「この表現は(政策的に)マズい」と作家に伝えてくるので、あとは空気を読んで安全そうなポジションを探して書くしかありません。
――マンガも似たような感じでしょうか?
はちこ やはりWeb連載です。日常系マンガの『19天』なんかは人気ですね。ただ、性的な表現は難しいので、全年齢向けの内容になりがちです。
――おそらく書籍の刊行はしんどいでしょうね。
はちこ そうですね。そもそも最近の中国は出版が難しい時代です。雑誌や書籍を出す際に当局から許可される中国版書籍コードの「刊号kān hào」や「書号shū hào」自体を、最近はなかなか出してもらえません。あと、実は同人誌も難しい。濡れ場があるような内容は、リスクが大きいので作家がまず出さないと思います。
――そう聞くと、同人誌が自由に出せる日本ってすごいですね。貴重な環境なんだなあ……。じゃあ、現在の中国のBLコンテンツは「濡れ場ナシ」の健全なものばかりなんですか?
はちこ いえ……。ネットに音声をアップするドラマCDでは、わりと踏み込んだ表現が(笑)。高校時代にハマりましたね。大学に入って日本語を勉強してからは、日本語のドラマCDに乗り換えましたが。
――なるほど。たとえ言論が規制されても中国の腐女子はしぶとい……。ありがとうございました。