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「この話がウソである確率は10%ほどか」が一転

 一方、事件そのものに疑いをもつ人も、数多く現われた。トラビスが住むスノーフレークの住人ばかりでなく、UFO専門家の口からも、信頼性を疑う発表がなされたのである。GSW(航空宇宙関係の技師)は、当初、現場を調査して、「10ガウスという異常に高い残留磁気」「この話がウソである確率は10%ほどか」などと発表していたが、この時期になって“疑念”を表明するようになった。「トラビスがなぜか逃げ回っていること」「テューソン市の私立病院にいた、というその頃、トラビスはフェニックス市の精神・心理医スチュアード博士のオフィスにいたこと」などなどが、スポールディングのあげた疑念であった。

 デュエインは、これに対して当然反撃に出たが、やはりトラビスの所在は明かさなかった。結局のところ、トラビスのポリグラフ・テストが待たれたのである。

 トラビス・ウォルトンのポリグラフ・テストは、11月14日の金曜日と決まった。マスコミ関係者、アリゾナ州の市民たちはかたずを飲んで、それを待った。

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 ところが、期待に反してトラビスは現われなかったのである。彼に対する非難が、一時に高まったのは当然で、ガレスピー保安官は、「今後テストは行なわず、もし話がデッチアゲとわかれば追及する」と声明、スポールディングも、「すでに大金と時間を費やしているが、もう調査は打ち切る。科学的UFO研究に対する信頼が失われることを恐れるからだ」と発表した。

 マスコミは躍起になってウォルトン兄弟を追った。しかし行方はわからず、「トラビス現われず。事件はウソか?」と、腹いせのように報じただけだった。そしてその後しばらくは、アリゾナ州のマスコミのほとんどが、UFO関係の事件すべてを黙殺するようになってしまったのである。