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「航行中、お客さまには船内を自由に歩き回っていただけるようになります。展望デッキを設けて外を見ていただいたり、ショップで買い物をしていただいたり。揺れについてもQUEEN BEETLEはゆっくりとした揺れなので、船酔いもきっと少ないと思いますよ。その分、今よりも少しだけ時間はかかってしまうのですが、QUEEN BEETLEでは移動そのものも旅の楽しみのひとつになってくれれば、と思っています」

JR九州高速船提供

今は「船乗り」も人手不足

 QUEEN BEETLEへの期待を隠さない森船長。船長としてのこだわりは、「コミュニケーション」だとか。すでに入社してから20年近くがたち、新入社員との年齢差も大きくなった。

「だからこそ、向こうに気を使わせすぎてはいけないな、と。僕に対して意見を言いにくいということを少しでもなくしていきたい。僕が安全だと思っても、向こうが危ないと思ったらそっちに寄せる、とかですね。若い社員でも免許を持ったプロですから」

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 ビートルが就航してから30年近くが経った。船舶事業を立ち上げた頃は他のJRグループで連絡船に乗船していた人たちの力を借りたり、もともと鉄道の運転士や保線マンだった社員たちがマスコンを舵輪に持ち替えて新たに免許を取得するなどしたという。航海士免許を取得して入社した森船長は草創期を支えた“レジェンド”に次ぐ第2世代。QUEEN BEETLEを旗印に、船乗りになりたい子供たちが増えて欲しい、という願いもあるという。

JR九州高速船提供

「僕が入社した頃は、免許を持っていても就職先がなかなかなかった。でも、今は人手不足なんです。だから、子供たちに将来なりたい職業は?と聞いたときに『船乗りさん』と言っていただけるようになれば嬉しいですね。まあ、船の仕事と言っても、ずっと海を眺めていられれば良いですが、実際はなかなかそうはいかない。でも、やりがいはありますよ(笑)」

 JR九州がこれまで送り出してきた数々の列車は、鉄道の旅の楽しさを改めて教えてくれた。森船長らが操る新型客船QUEEN BEETLEも、新しい船旅の楽しさを教えてくれるものになりそうだ。

写真=鼠入昌史