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 私の知り合いの駐日モロッコ大使も晩餐会に出席したが、「メニューを見てフランスの最高級ワインが出されているのに驚いた。相手側が飲まなくても最高級ワインを出すのはすごいことだ。本当は飲みたかったが、国王が飲まない以上それに倣うしかなかった」と残念そうに語った。私が「国の大小にかかわらず最高級のフランスワインを出すのは天皇の意思」と言うと、信じられないというように頭を振った。

皇室は賓客の訪問形式によっても差をつけない

 皇室は国を区別しないだけではない。賓客の訪問形式によっても差をつけない。外国の賓客の訪問形式には最高レベルの国賓をトップに、公賓、公式実務訪問賓客と続く。

午餐会でマクロン仏大統領とご歓談される雅子さま ©時事通信社

 新天皇、皇后は6月、公式実務訪問賓客で来日したマクロン仏大統領夫妻を午餐会に招いた。そのメニューが私の手元にあるが、〈スープ〉〈魚料理〉〈肉料理〉〈サラダ〉〈富士山型アイスクリーム〉〈果物〉と、品数・構成はトランプ大統領とまったく同じだ。

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 もちろん内容は異なり、魚料理は真鯛の洋酒蒸し、肉料理は仔羊だったが、国賓とまったく遜色ない。これは飲み物を見れば一目瞭然だ。銘柄は異なるが、白ワインは仏ブルゴーニュ地方の最高級、赤は仏ボルドー地方の最高級。「公式実務訪問賓客」は、訪問形式としては三番手のレベルだが、もてなしは国賓と同レベルだ。

天皇、皇后両陛下のお気持ちが凝縮された接遇

 外国の賓客は国の大小、訪問形式のいかんによらず、平等に最高のもてなしをする。天皇、皇后両陛下のお気持ちがこの接遇に凝縮している。

 また、美智子上皇后から雅子皇后へ受け継がれた「おもてなし」もある。

宮内庁提供